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日本茶の輸出先のいま・むかし(特任助教 粟倉大輔)


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4月5日 特任助教 粟倉 大輔

 日本茶輸出促進協議会のホームページで公開されている2021年における日本茶輸出のデータをみていると、日本茶は世界75ヶ国に輸出されているのが確認できる(前年は76ヶ国)。また、輸出額は204億円、輸出量は6,178トンである。なお、前年の2020年がそれぞれ161億円、5,274トン、であることから、ともに前年よりも上昇している。なお、輸出額ベースの順位での上位11位までの顔ぶれは2020年と2021年で変わっていない(1位から順に、アメリカ、ドイツ、台湾、シンガポール、カナダ、香港、マレーシア、タイ、フランス、イギリス、オーストラリア)。新型コロナウイルスの感染拡大の終息が見通せないなか、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が勃発するなど、これからの世界各国の貿易状況もどのように推移するのか予断を許さない。そうしたなかではあるが、上記の国々は、今後とも日本茶輸出にとって重要な輸出先となるであろう。
 
 ちなみに、日本茶は先程名前をあげたロシアとウクライナにも輸出されている。2ヶ国の輸出額ベースの順位を比較してみると、ロシアは2021年15位(2020年16位)、ウクライナは30位(43位)である。ロシアも現在の日本茶輸出にとって貴重な輸出先であること、ウクライナの順位が大幅に上がっているのがわかる。ウクライナの輸出量と輸出額を具体的に見てみると、2020年が1.0トン、542万円であるのに対し、2021年は5.4トン、2,733万円と、ともに5倍の伸びを示している。このウクライナの輸出拡大の理由は不明であるが、現在の情勢下では、ロシア、ウクライナ双方の今後の日本茶輸出がそれまでのように行われるのは難しいと思われる。

 ウクライナのように大幅に輸出額の順位を上げたケースでは、他にアフリカのモロッコがある(45位→24位)。モロッコの輸出量と輸出額の変化を見てみると、前者が1.3トンから33トン、後者が343万円から5,717万円である。変化の度合いとしてはウクライナ以上といえる。ただし、その要因は何だったのかはこちらもよくわかっていない。このモロッコにしてもウクライナにしても、日本茶輸出全体でみれば決して大きな地位を占めているわけではないが、今後こうした国あるいは地域が日本茶輸出にとって重要な役割を果たすことになるかもしれない。茶に限った話ではないが、輸出をしていくうえでその商品の販路拡大、市場開拓は欠かすことのできないものである。

 それにしても、現在の日本茶が、東南アジアやアフリカ、東欧など様々な国や地域に輸出されているのに、驚く人々もいるのではないだろうか。しかしながら、こうした日本茶を海外に幅広く輸出していく試みは、実は戦前から茶業界の手で行われていた。

 幕末開港(1859年)から第1次大戦期(1914~18年)頃までは、日本茶はそのほとんどがアメリカに輸出されていた。すなわち、乱暴な言い方をすれば、この時期の日本の茶業界は、アメリカにおける茶消費、茶市場の動きについて把握していればよく、アメリカ以外の国や地域に日本茶を売り込む努力を払わなくてもそれほど困ることはなかったのである。しかし、第1次大戦が終わった1920年代に入ると、大戦前からアメリカ市場で競争を展開していたインド茶やセイロン茶の対米輸出がどんどん拡大していく一方、その勢いに押され日本茶の輸出は苦境に立たされていく。こうした状況に直面した日本茶業界は、アメリカ以外への国や地域への日本茶の販路拡大を本腰入れて目指すことになった。

 第1次大戦後、ヴェルサイユ・ワシントン体制と呼ばれる新しい国際秩序が構築され、世界は安定期を迎えた。日本もこの体制に組み込まれたことで、欧米各国との協調路線をベースに政治・軍事・外交が展開された。安定した国際関係を背景に、日本茶業界は、販路拡大のための調査を世界各地で行うことになった。これに関する資料の一部が、文生書院から2004年に出された『日本茶業史資料集成』(全23集)のうちの第21集「海外に於ける製茶事情/海外新販路茶市場調査諸報告」、第22集「海外製茶市場調査諸報告」、第23集「海外製茶販路拡張派遣員報告/日本茶貿易概観」に収録されている。この資料を見てみると、当時の日本茶業界がアフリカ、中近東、南北アメリカ、ソヴィエト連邦といった各地の茶の輸出入統計や消費動向に関する情報を広範に集めていたことがわかる。しかしながら、戦前の日本茶の販路拡大に関する詳細な分析は、これまでほとんど行われてこなかったといってよい。

 こうした資料を読み込むことで、日本茶輸出拡大に向けてのヒントが出てくるのかもしれない。

【参考サイト】
日本茶輸出促進協議会ホームページ
https://www.nihon-cha.or.jp/export/date/index.html