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人類が生存する地球環境は限界状態 (客員教授 P.Gankhuyag)


静岡県立大学グローバル地域センター 
客員教授 P.Gankhuyag
モンゴル国大学院大学国際研究所所長 (Ph.D)

 
 この青い地球で、人間がどのように進化してきたかに関しては色々な説がある。その一つ、400万年前からゆっくりと猿人、原人、旧人、新人という4つの段階を経て今の人間の姿に移った事を学者たちの大部分が認めている。
 人類が進化し,そのうち集団生活に移り、地球資源を使って産業発展への活動を始めたのがつい最近の産業革命(Industrial Revolution)、18世紀後半からである。人間社会の発展に大きく拍車をかけたのが、確かにこの産業革命である。他方で、その後たったの数百年で、人間が自分たちが生きる地球環境を悪化させ、温暖化、大気汚染、オゾン層破壊、砂漠化による黄砂問題、水不足、気候変動そしてパンデミック感染病など様々な困難に直面している。地球温暖化が認知され始めたのは1980年代で,温室効果ガスの削減が始まるまでに多くの議論が行われ、約20年間の年月が過ぎた。
 学者のジョゼフ・フーリエ、ジョン・ティンダル、スヴァンテ・アレニウスらは1800年頃から科学実験の結果、二酸化炭素・オゾン・メタンなどの温室効果ガスが地球上2倍になれば大気中の気温が5~6℃上昇することも発表していた。しかしこの様な科学知識は一般に認知されなかった。
 
 20世紀の中頃から環境汚染に対する住民の問題意識が高まり、行政の責任も高まり、学術面でも公害に関連した研究が盛んになった。国連で環境問題を取り上げ1995年のCOP1から2001年のCOP7の協議を経て、最終的な合意(マラケシュ合意)に至った。2007年のハイリゲンダムサミットで「温室効果ガスを2050年までに半減する」との合意が為された。
 国連が主導権をとって、地球温暖化対策に限らず、世界各地の域紛争解決、貧困対策など様々な問題に携わっている。2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットにて採択された国連ミレニアム宣言にて、2015年までに達成すべき世界的目標「ミレニアム開発目標」(MDGs)に合意した。その結果、国連のレポートによると、貧困に関するターゲット 「2015までに1日1ドル未満で生活する人口比率を半減させる」において、2015年には1/3に減少、1日1.25ドル未満で暮らす人々の割合は世界全体で36%→12%, 開発途上地域では47%→14%になった。国連「ミレニアム開発目標」(MDGs)達成において、世界各国の貧困対策が成果を上げた。
 国連の2015年9月25日の総会で、次の15年間の世界目標である「持続可能な開発目標( Sustainable Development Goals)SDGs」が採択された。このSDGsの17の目標の13、14、15には環境に焦点を当てた環境保護対策が入った。
世界各国の人々の生活水準上昇、貧困問題、地域紛争などよりも人間が生きる青い地球が晒されている問題について何よりも考えなければならなくなったことに気が付いたようだ。
 地球環境問題は国連や各国政府限らず国際機関、民間企業、NGO、NPOなども積極的に参加し、それぞれが研究調査を始めている。
 日本のNPO法人地球元気村の主催で、2024年3月6日に日本の山梨県で開催された「テラなびサミット」(テラはラテン語で地球、なびはナビゲーション、検討する・考える)はこれからの地球を皆で考える会であった。そのサミットで、昆虫研究から自然界のあらゆる分野の研究者や学者らが参加して今の地球が如何に危険な状況にあるかについて研究発表した。発表者の一人、石田秀輝教授(一般社団法人サステナブル経営推進機構理事長)の話の中で、「『生物多様性』『チッソの循環』『気候変動』『マイクロプラスチック』問題に対し、2030年までに、具体的な対策を実行しなければ文明崩壊の引き金に手を掛けるところまでになる」「地球資源の限界で人間は日常暮らしの約4割の環境負荷で暮らす必要性が出ている」など我々地球人が今から目覚めるべく、シグナルが聞こえた。
 国連が2030年以降の世界開発目標を立てる際に、一番重要なテーマは「人類が生き残るために青い地球を如何にして元の姿に取り戻すか」を定義することである。

自然に優しい人間の生活スタイルはあるのか
 最近、このテーマを研究する学者たち、David Sneath, Michael B.Schmidらは遊牧民たちの文化や社会構造、環境と如何に調和して生きているかの研究を行っている。そもそも人類が始まったころ、自然が先で自然環境の状況に合わせて家畜を移動させながら放牧し、その家畜を追って生活するのが人間だった。言い換えれば、地球環境が第1で、家畜が2番、人間は3番だった。今は人間が1番で物事の決断をして、動物は2番、自然環境は3番と順番が変わった結果、自然が荒らされ、環境問題が限りなく悪化した。
 最近は「デジタルノマド」「ノマドアート」「ノマドライフスタイル」「ノマドテクノロジー」「ノマドワーカー」「ノマドビザ」など、数多くの言葉でノマドの文字が使われるようになった。ノマドの意味は、「世界中を移動しながら特定のオフィスに縛られずインターネットを利用して働く人々」である。移動するために必要最低限の物を持ち、簡素な生活を通じて時間やエネルギーを有効に使い、自然に優しい生活をしている。
過去、現代、未来において、多くの人々が望む生活スタイルの中で、ノマドライフスタイル(遊牧民生活)が、環境にフレンドリーで、人類が経験してきた唯一の貴重な文化で、もしかしたら青い地球を取り戻す一つの道かもしれないと思われる。

最後に
 地球環境の専門家たちは、地球が直面している今の環境問題に対して、「限界状態」だと強い警告を発している。元NASAゴダード宇宙研究所ジェームズ・ハンセン所長は「早急な行動が必要で、温室効果ガスの排出を大幅に削減するべき」と警告、環境活動家グレタ・トゥーンベリ氏は「私たちの家が燃えている、行動を起こすのは今だ」と訴え、生物学者エドワード・O・ウィルソン博士は「地球上の生物種の半分が21世紀中に絶滅する可能性がある」と述べ、アントニオ・グテーレス国連事務総長は「気候変動は我々の時代の決定的な問題で迅速な行動が不可欠」と強調した。
 我々地球人はこれから環境にやさしい行動をし、自分たちが生存できる青い地球を残すための新たな生き方、ラフスタイルを築くことが強く求められている。