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シェルターなしに防衛力整備もないものだ (特任教授 小川 和久)


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6月14日 特任教授 小川 和久
 
 6月5日、北朝鮮が弾道ミサイル8発を日本海に向けて発射し、ミサイル防衛能力を上回る数の発射による飽和攻撃が懸念されるといった、浮き足だった議論が飛び交っている。しかし、うろたえるな!と言いたい。

 ミサイル攻撃と言っても、通常弾頭のミサイルの場合、直撃以外、被害は限定される。核攻撃は別として、それを証明したのがロシアに侵攻されたウクライナだった。

 通常弾頭のミサイルや砲弾の威力は、ウクライナ軍が各国から供与された155ミリ榴弾砲にしても、1発の砲弾が着弾してまき散らす破片の殺傷範囲はせいぜい50メートル四方しかない。ミサイルも似たようなものだ。

 筆者は国民保護法の制定にあたり、内閣官房危機管理研究会の主査として湾岸戦争におけるイスラエルのケースを挙げ、基本的な対策としてシェルターの必要性を強調した。

 このときイスラエルは、イラクからスカッド・ミサイルの射程延伸型のアル・フセインを39発撃ち込まれたが、死者は合計12人、うちミサイルによる死者は2人にとどまった。

 これは、アラブ諸国や敵対勢力に囲まれたイスラエルが市民防衛を徹底させ、建物にはシェルターを義務づけてきた結果である。

イスラエル・スデロット市の公共用シェルターの入口

 ニュースでも明らかだったように、ウクライナの首都キーウ(キエフ)の地下鉄の駅の頑丈さと規模の大きさは日本では想像できないほどだったし、民家にも地下室が備わっていた。長期間ロシア軍を足止めしたマリウポリのアゾフスターリ製鉄所に至ってはシェルターは地下5階。2カ月以上、民間人とウクライナ軍の数千人を収容していた。

 このようなウクライナのシェルターは旧ソ連時代、米国の核攻撃に備えて主要都市に建設されたものだ。キーウのアルセナーリナ駅は地下105.5メートル。世界で最も深い場所にある。ロシア側もモスクワの地下鉄などは地下84メートルの深さにあり、第2次大戦中にはドイツ軍の猛攻撃に耐え、冷戦時代から核シェルターとして西側にも知られていた。

 そのシェルターが日本にはない。日本核シェルター協会によれば、核シェルターの普及率はスイスとイスラエルの100%を筆頭に、ノルウェー98%、米国82%、ロシア78%、イギリス67%など。それが日本の普及率は0.02パーセントと、対策が皆無である現状が浮き彫りになっている。

 筆者は2017年3月にJアラート(全国瞬時警報システム)の訓練が行われて以降、少なくとも県庁所在地などのビルと公共施設は、警報発令時には通行人も素早く避難できるようシェルターに指定し、訓練すべきだと提言してきたが、政府はもとより実行に移した自治体もない。

 地下鉄の駅にしても、キーウばかりでなく、韓国のソウル、プサンの地下鉄出入口は殺到する避難者がスムーズに逃げ込めるよう広く設計されているが、日本は片側2人が通るのがやっとの対面通行の階段で、ミサイルの被害以前に将棋倒しの犠牲者が懸念される状態が放置されている。

 このように、国民を守るための基礎ができていない日本である。以上のようなシェルター問題をただちに解決するほどの決断力と行動力が求められている。