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静岡に暮らす心構えとして知っておきたい地震や火山のこと(その2: 最近の地震活動) (特任准教授 楠城 一嘉)


8月30日 特任准教授 楠城 一嘉
 
 同タイトルの”その1”から数年経ちましましたが(リンク1)、本コラムは”その2”とし、2022年7月25日に静岡県東部で起きた地震について解説します。

 その日の早朝7時17分に起きた地震は、マグニチュード(M)3.5で規模があまり大きくない地震でしたが(図1)、震源が富士宮市の直下のため最大震度3を観測しました。出勤・通勤前の時間帯なので、自宅で揺れを体感された方が多いのではないでしょうか。また同市で最大震度2や最大震度1を観測する地震も起きました。富士山麓の富士宮市で起きた地震ということで不安を感じたかも知れません。

 今回の地震は、富士川河口断層帯という富士市や富士宮市にまたがってほぼ南北に延びる断層帯のごく近傍で起きました(図1)。その意味で、特異な地震というよりは、これまでも地震の起きていた場所を震源とする地震だったと言えます。ちなみに東日本大震災を引き起こした大地震の4日後、2011年3月15日にM6.4の地震が発生して富士宮市で震度6強を観測しましたが、富士川河口断層帯を震源としたものではありません。

 富士山との関係を考えると、今回の地震は地下にあるマグマだまりを刺激するほどの大きな地震活動ではありません。静岡地方気象台も富士山の火山活動を観測するデータに特段の異常はないとしている様です。また、前日の7月24日に起きた鹿児島県の桜島の噴火も記憶に新しく、関連が気になるところですが、距離の遠い火山なので、桜島の噴火が直接今回の地震に影響を与えたとは考えづらいです。

 次に、今回の地震と富士川河口断層帯について深掘り解説をします。国の発表によると(リンク2)、同断層帯はフィリピン海プレートと陸のプレートの境界付近に位置し、駿河トラフで発生した海溝型地震に伴って活動したと推定されています。この場合、海溝型地震と合わせてM8程度の地震が発生した可能性があります。一方、同断層帯は、駿河トラフで発生した海溝型地震とは独立して活動してきた可能性もあります。

 これまでの調査から、将来の地震について様々な起き方が想定されている様ですが、同断層帯は、今後30年間に地震が発生する可能性が日本の主な活断層の中では高いグループに属しています(※1)。将来の地震発生確率には幅があり、信頼性が低くなることの留意が必要ですが、地元で暮らす者として知っておきたいことです。

 今回の地震が同断層帯を震源としたものでなくても、断層帯のごく近傍であるが故に、この地震が刺激となって同断層帯に沿って地震活動が広がったり、同断層帯を震源とする大地震が起きたりするのではないかと、地元の地震研究者として地震活動を注視していましたが、現在まで兆候は見られません。7月25日以降小さな地震は続きましたが、現在活動は収まっています(図1)。

 富士宮市周辺にお住まいの方は「ひやっ」とし、その他の地域の方は「いつ地震が起きてもおかしくない」と思い、この機会に地震に対する日頃の備えを再確認した方も多いのではないでしょうか。一方で、これからやろうという方もいるかも知れません。例えば、ローリングストックという、普段の生活の中で少し多めに食材や加工品を買っておき使った分だけ買い足していくことで、常に一定の食料を家に備蓄しておくことはいつでもはじめられそうです。これは食べ物・飲み物だけではなく、ティッシュやトイレットペーパーなどでも同じです。

 地震防災にとって、いつ地震が起きても対応できるように準備を整えておくことは重要です。静岡で暮らす上でそのヒントになる読み物「地震と火山と防災のはなし」を先日出版しました(リンク3)。ローリングストックなど生活に密着した話題を盛り込みつつ、静岡の地震や火山の特性を知って防災に生かしている事例も紹介しています。ご興味があればぜひ手にとってみて下さい。

※1 
「高いグループ」とは、今後30年間に地震の発生する確率が3%以上の断層帯が属するグループのこと。このグループに属する活断層帯は「Sランク」と呼ばれることもあり、全国に「Sランク」の活断層帯が31ある。次いで切迫度が高い「Aランク」(確率が0.1―3%)の活断層帯は全国に35ある。そのほか「Zランク」(確率が0.1%未満)や「Xランク」(データが少なく評価が困難のため確率が不明)の活断層帯もある。



図1. 2022年7月25日に静岡県東部を震源とするM3.5の地震(※2)。
(a)左図:矢印は同地震とその後1日間に起きた地震の位置を示す。赤色の“]”で富士川河口断層帯の位置を示す。今回の地震は同断層帯付近で起きた。右図:左図と同じだが、最近(8/20-27)の地震活動を示す。挿入図:左図のズームアウト。四角は注目している地域。
(b) M3.5の地震の後にまとまった活動があった。8月18日以降地震が起きていない。

リンク1 https://www.global-center.jp/column/column1/2018/300801-67846/
リンク2 https://www.jishin.go.jp/regional_seismicity/rs_katsudanso/f043_fujikawa/
リンク3 https://www.global-center.jp/review/publication/2022/#6e0e7df3
リンク4 https://www.hinet.bosai.go.jp/?LANG=ja

※2 (a)は防災科学技術研究所Hi-netのHP(リンク4)の図をもとに作成。(b)は気象庁一元化震源カタログを使用して作成。