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関東大震災の真実(客員教授 長尾年恭)


10月4日 静岡県立大学グローバル地域センター客員教授 長尾年恭
 来年(2023年)9月1日で、関東大震災の発生から満100年となります。すでに今年から100周年に向けて、色々な防災・減災の企画がスタートしているようです。今回のリレーコラムでは、関東大震災について、従来とは違う視点から考えてみたいと思います。

 本論に入る前に、これまでに「大震災」と呼ばれる震災が日本では3件発生しています。1番目が1923年に発生した関東大震災です。2番目が1995年の阪神・淡路大震災で、3番目が2011年の東日本大震災となります。

 皆様は、震災の名前と地震の名前とがどのように決められるのか、ご存知でしょうか。もちろん東日本大震災や関東大震災、阪神淡路大震災というのは地震の名前ではありません。地震そのものの名前はそれぞれ東北地方太平洋沖地震、関東地震および兵庫県南部地震というもので、この名称は気象庁が発生後に短時間のうちに命名します。それに対して震災の名称には閣議決定が必要となるのです。そのため決定まで地震発生から時間がかかる事があるのです。東日本大震災も当初は東北大震災や、東北関東大震災という名前が候補に挙がりました。しかし、その被害が広範なため、最終的に東日本大震災と命名されたのです。

 皆様御存知のように、最初に命名された関東大震災では、火災による被害が強調されました。その結果、この震災により「地震だ、すぐ火を消そう」という事が言われるようになったのです。
 そのためか、この地震に伴った津波については、相対的に関心が薄かったようです。しかしながら、この地震では、静岡県沿岸にもかなり大きな津波が到来していました(例えば熱海で7-12m、伊東で6-8m、宇佐美で7m、下多賀・網代・稲取で6m等、神奈川では真鶴で9m,由比ガ浜で9m,江ノ島で7m、三崎・平塚・鎌倉で6m等)。

 ちなみに3つの大震災の主な死因は異なっており、関東大震災では上記のように火災が大きな死因でした。阪神淡路大震災では、建物の倒壊により、80%以上の方がお亡くなりになったため、耐震補強の重要性が喧伝されました。そして東日本大震災では、ご存知のように津波により多くの方がお亡くなりになりました。

<閑話休題>
 関東大震災を引き起こした関東地震のマグニチュードは7.9でしたが、この地震は実は多くの大きな余震を伴ったのです。その事は今では、ほとんど忘れさられているようです。さらに本震はほぼ同時刻に2つの地震が重なったものという解析結果も存在しています(双子地震)。
はっきり断定できないのは、地震発生直後に首都圏の地震計のかなりの数が故障等により記録出来なくなってしまったため、震源地近くで正確な地震計の記録が少なくなってしまった事に起因します。ちなみに気象庁の公式記録によれば、本震発生後の2日間でマグニチュード6以上の地震(余震)が19個発生していました。特に本震発生から1時間以内に、相模湾を中心に5つの大きな余震が発生しており、実際にはどの地震が火災の本当の原因であったかは区別できていないのです。

2日間で20個近くの大きな余震が発生していた。

 実は、東日本大震災の時にも、筆者の自宅のある千葉県浦安市は大きな液状化被害に襲われましたが、この液状化被害も、3・11の本震発生の30分後に銚子沖で発生したマグニチュード7.6の巨大な余震により液状化がさらに進んだ可能性も大きいのです。

 重要なのは、関東大震災のような相模トラフの沈み込みに伴って発生する津波は、東日本大震災と異なり、海溝(相模トラフ)が海岸から近いため、第一波は地震発生後、数分で海岸へ到達するのです(ちなみに東日本大震災では最低でも20分以上の猶予がありました)。
 これは、将来発生が確実視される南海トラフ沿いの巨大地震も、東北地方太平洋沖地震や関東地震と同じ逆断層型のメカニズムである事から、100%津波が発生します。

 そして震源域が陸に近い駿河湾内にまで広がっている事から、津波は数分で海岸に到達します。極端に言えばまだ揺れている最中に津波が襲来するのです。内閣府は「南海トラフの巨大地震では、10分以内に避難行動を開始すれば80%の人は助かる」と言っています。
 しかし、これは裏を返せば、「残りの20%の人は10分以内に避難行動を開始しても助からない」と言っているに等しいのです。そしてこの20%に相当する人の多くが静岡県民なのです。

 そのため、グローバル地域センター・自然災害研究部門では、南海トラフで起きている現象(異常)を複数の手法でリアルタイム監視し、さらに人工知能も駆使して、なんとか短期・直前予測の精度を向上させる事を目指しています。そして、たとえ地震発生10分前でも、「これは明らかにおかしい」と判断できた場合には、県民に対してありとあらゆる手法を駆使して、情報発信できるよう研究を続けていく所存です。