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参考になる米国大統領の職務継承(特任教授 小川和久)


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11月13日 特任教授 小川和久(特定非営利活動法人・国際変動研究所理事長)
マスコミは米国大統領選挙の混乱ぶりばかりを報道している印象があるが、その一方で世界一の超大国の危機管理機能が一定の水準で維持されていることについて、その角度から伝えられることは少ない。

例えばトランプ大統領が新型コロナウイルス感染症で入院したとき、米国の安全はどのような仕組みのもとに担保されていたのか。

その骨格をなしているのは大統領の職務継承に関する法律と順位である。

合衆国憲法第2条第1項の6(または 第2章第1条第6 項)は、「大統領が罷免され、死亡し、辞職し、またはその職権および義務を遂行する能力を失ったときは、副大統領が、大統領の職務を行う。連邦議会は、大統領と副大統領がともに罷免され、死亡し、辞職し、または執務不能に陥った場合について、法律により、いかなる官吏に大統領の職務を行わせるかを定めることができる」としている。

さらに1967年の憲法修正第25条では、副大統領が「臨時大統領」となる条件や、大統領が回復したときの手続きなどが次のように明確化された。
(第1項)大統領が免職され、死亡しまたは辞任した場合には、副大統領が大統領となる。
(第2項)副大統領が欠けたときは、大統領が副大統領を指名し、指名された者は、連邦議会の両院の過半数の承認を経て、副大統領の職に就く。

このほか第3項(大統領が、上院の臨時議長および下院の議長に対し、その職務上の権限および義務を遂行することができない旨を書面で通告したとき)、第4項(副大統領、および行政各部の長または連邦議会が法律で定める他の機関の長のいずれかの過半数が、上院の臨時議長および下院議長に対し、大統領がその職務上の権限および義務を遂行できない旨を書面で通告したとき)も定められている。

それに伴う職務継承の順位も第18位まで決まっている。
①副大統領、②下院議長、③上院臨時議長、④国務長官、⑤財務長官、⑥国防長官、⑦司法長官、⑧内務長官、⑨農務長官、⑩商務長官、⑪労働長官、⑫保健福祉長官、⑬住宅都市開発長官、⑭運輸長官、⑮エネルギー長官、⑯教育長官、⑰退役軍人長官、⑱国土安全保障長官

さらに、「指定生存者」の存在もある。

大統領就任式、一般教書演説など、米国の主要な人物が一堂に会する場面では、核攻撃、テロ等で全員が死亡する事態を避けるため、大統領職務継承者である閣僚の一人を「指定生存者」に定め、絶対に被害が及ばない場所に待機させ、核兵器使用の権限も与えている。2001年の同時多発テロのあとは、議会側も上下両院の各党を代表する議員2人を指名し、重要イベントに出席させない措置をとっている。

それが日本の場合、2000年4月に小渕首相が倒れた教訓に学んだとはいえ、組閣のたびに第5位までを決めることになっているだけで、職務によって決める方向は生まれていない。静岡県をはじめとする自治体の場合も同様だ。

米国大統領選への関心の高まりを受けて、いま一度、緊急事態における静岡県の職務継承の仕組みを明確にしてはどうかと思う。