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土砂災害に静岡モデルを(特任教授 小川和久)


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7月9日 特任教授 小川和久(特定非営利活動法人・国際変動研究所理事長)
熱海市伊豆山地区を襲った7月3日の土石流災害を受けて、あらためて土砂災害対策の難しさを痛感させられている。6日付の読売新聞朝刊にも対策に苦慮する静岡県側の声が紹介されている。

「静岡県では、危険渓流4247か所のうち、砂防ダムが設置されているのは約1割の559か所だ。同省や県の担当者は『全てに整備をするのが理想だが、膨大な時間と予算がかかり、追いつかない』と説明する」

私は2012年春から静岡県の危機管理に関わり、今回のような土石流災害を含む土砂災害への対策について、岩田孝仁(2014年当時)、杉保聡正(2018年当時)の両危機管理監とは2度にわたって協議したことがある。

その結果、危機管理部でできることとできないことがはっきりした。

危機管理部で可能なことは、土砂災害危険区域の指定、ハザードマップへの表示、住民への注意喚起、住民避難計画の策定、避難訓練の実施などで、実効性はともかく、いずれも実行されている。

できないことは山ほどある。

土砂災害危険区域に関係する開発の認可、規制、立ち退きの優先順位の決定、危険地域の立ち退き要請、立ち退きに伴う補償、地滑りなどの警報装置の開発と設置…。

危機管理部に権限と予算が与えられていれば、立ち退きの優先順位の決定、危険地域の立ち退き要請、地滑りなどの警報装置の開発と設置くらいは実行に移すべきだと思うが、現状ではそうはいかない。

しかし、県を挙げて取り組むことになれば不可能ではない。

このようなオール静岡で取り組むべき課題に同時進行で着手し、スピーディーに実行していくには県としての司令塔機能が必要だ。

具体的には、危機管理担当の難波喬司副知事の下に知事戦略局、政策推進局(財政課)、危機管理部、交通基盤部など関係部局から適材を集め10人ほどのチームを作るのである。

そして、最初は上記について自由なブレインストーミングを行い、議論を整理する中で個別の課題について詰めていく。そこから優先順位を決め、実現に向けてのロードマップを描き、知事の意見を求め、必要な点について修正などを行う。

特に、土砂災害危険区域に関係する開発の認可、新規開発の規制、既に進められている開発についての介入、立ち退きに伴う補償措置などは、法的・財政的な問題が関わるだけに、議論がまとまるまでには一定の時間を要するものと覚悟しなければならない。

当然、条例の制定や改定が必要なものは県議会に諮ることになる。県議会各会派との話し合いも入念に行われなければならない。

以上のプロセスを経て、知事の最終的な承認のもと、総合的な対策が実行される。

このような行政の縦割りを乗り越えた戦略的な取り組みには、的確な判断力と強い実行力が伴わなければならない。幸い、静岡県では川勝平太という優れた知事が4期目を迎えている。

熱海の悲劇を教訓とするため、川勝知事には先頭に立って静岡モデルを描き、全国の安全のために役立てることが期待されている。