7月分
ニュース:オックスフォード大学のワクチン、臨床試験で効果
オックスフォード大学が開発中の新型コロナウイルスワクチンChAdOx1 nCov-19の臨床試験結果がランセット誌に発表され、ワクチンが18歳から55歳の被験者に2か月以上続く免疫反応の生成を促したとした。臨床試験は4月から約1000人を対象に行われ、うち半数の介入群がワクチンを接種された。介入群のほぼ全員が、ウイルスを無力化する抗体を体内で生成すると同時に、抗原を認識するT細胞の活動を促すという2重の免疫反応を示したという。現在、英国・南アフリカ・ブラジルで1万人を対象とした臨床試験が行われており、米国でも3万人を対象とした試験が予定されているという。(2020年7月20日)
ニュース:ロシアのハッカー集団、ワクチン情報狙いか
米国・英国・カナダの政府は、ロシア政府の関与するハッカー集団が、新型コロナウイルスワクチン開発の情報を求めて不正アクセスを繰り返しているとロシア政府を非難した。問題のハッカー集団はAPT29、Cozy Bear、The Dukesなどと呼ばれ、2016年米大統領選の際に民主党全国委員会のメールや文書を盗み出した集団で、ロシア対外情報庁(SVR)またはロシア連邦保安庁(FSB)の支援を受けていると、オランダ総合情報保安局(AVID)やサイバーセキュリティ企業が報告している。(2020年7月15日)
ニュース:Moderna社ワクチン臨床第2段階好結果
Moderna社が開発中の新型コロナウイルスワクチンの臨床試験において、最初の被験者45人全員に免疫反応がみられ安全性も確認されたことが、New England Journal of Medicine誌で報告された。臨床試験の第3段階は7月27日から3万人を対象に行う予定だという。その半数は偽薬を投与される対照群。(2020年7月14日)
ニュース:NY市一部地域で7割に迫る抗体保有率
米ニューヨーク市の労働者が多く住む地域では、新型コロナウイルスの抗体保有率が非常に高いことが明らかとなった。クイーンズ区コロナでは68パーセント、同区ジャクソンハイツでは56パーセントに上るという。これは世界一高い抗体保有率だと考えられる。ニューヨークタイムズ紙が報じた。対照的に、ニューヨーク市内でも白人が多い、より裕福な地区の抗体保有率は13パーセント前後と低く、感染第2波が押し寄せた場合の感染リスクはより高いとみられている。(2020年7月10日)
ニュース:伊ベネチアが治水ダムを試験運用
イタリアのベネチア市は洪水から街を守るために作られた、空気注入式のバリアからなるダムの試験運用を初めて行った。試験運用は90分かけて行われたが、実際には30分以内で空気注入は完了し、洪水を押しとどめることが可能だという。2003年から55億ユーロ(7300億円)をかけて行われているプロジェクトで、2011年には完成が予定されていたものが、汚職事件などで大幅にスケジュールがずれこんだ。2021年12月に完成予定だが、前倒しになる可能性もあるという。(2020年7月10日)
ニュース:CISA、産業制御システム戦略を発表
サイバーセキュリティおよびインフラ安全保障局(CISA)は、米国民が毎日利用する基幹的サービスを保護するためのより積極的・協力的なサイバーセキュリティを目指し、産業制御システム(ICS)サイバーセキュリティの強化と統合のための戦略を発表した。システム構築者、所有者、運用者、ベンダー、研究者といったICSコミュニティが、より安全なICSオペレーションに向けた能力を構築するのを手助けすることを目的としている。戦略全文は次のリンク先に公開されている。(2020年7月7日)
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ニュース:新型豚インフル注意必要―NIAID所長証言
米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のファウチ所長は米議会で証言し、次なるパンデミックを引き起こす可能性がある新しい豚インフルエンザウイルスに注意を払い、今後監視していく必要があると述べた。米国科学アカデミー紀要に今週掲載された新研究によれば、中国の豚はG4という新種のウイルスの感染率が増加しており、欧州・アジアの鳥インフルエンザ、2009年に流行したH1N1株、豚、鶏、ヒトのインフルエンザからの遺伝子を含む北米のH1N1株の系譜をくむものだという。H1N1がここに含まれることで、G4がヒトに感染するウイルスへと変異する可能性があると研究は結論付けている。ファウチ所長は、中国が過去1、2週間に同ウイルスが空気中に存在すると確認しており、まだヒトへの感染は確認されていないものの、これは遺伝子再集合の可能性があることを示しており、2009年の豚インフルエンザのような大流行の可能性も否めないとした。(2020年7月1日)
ニュース:世界の新型コロナ感染者数1000万人超える
6月30日時点で世界の新型コロナウイルス感染者は1000万人を超え、死者は50万人に達した。感染者は毎週およそ100万人ずつ増えており、感染者がもっとも多い米国がその約半数を占めており、ブラジル、インドがその次に多い感染者数を記録している。イラン、イラク、リビア、モロッコ、パレスチナ自治区、オマーンなどでも感染の増加が報告されている。(2020年6月30日)
ニュース:米のコロナ感染者、実際は10倍以上か
6月25日、米疾病管理予防センター(CDC)のレッドフィールド局長は記者会見で、現在の米国のCOVID-19の患者数はきわめて過小評価されているおそれがあると述べた。今までは症状のある患者にのみCPR検査をしてきたが、抗体検査を行った結果、無症状感染者が相当数いることが判明したためで、実際の感染者数はCPR検査で判明している数の約10倍に上るとみられるという。(2020年6月26日)
技術研究情報:トンネル事故の際の誘導システム
ノルウェーの独立研究開発機関SINTEFは、車両事故の後、煙に包まれたトンネルから人々を安全に避難させるためのシステムとして、音声による誘導システムを試験運用している。要避難者の中には視覚または聴覚に障害のある人もいる可能性があるので、研究者は視覚と聴覚の両方で誘導可能なシステムを試験運用し、かつ、特定の言語によらないユニバーサルなシステムの構築をめざしている。これまでのテスト結果では、3分の2の人が誘導に従って無事に避難した。視聴覚の衰えている50代以上の人は若い人よりも避難に時間がかかったので、複数の異なる信号で誘導することを重視しているという。(2020年6月22日)
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報告書など:米国科学・工学・医学アカデミー出版「公衆衛生上の緊急事態準備体制と対応のためのエビデンスに基づく慣行」
地域社会が複雑な公衆衛生上の緊急事態に直面した場合、州・自治体の公衆衛生機関はどのようにして効果的に事態に対応するかという難しい決定を迫られる。9・11同時多発テロ後、米国は公衆衛生上の緊急時体制を向上させ、幅広い脅威に対応するインフラを開発するために何十億ドルもの資金を費やし、多くの人材を投入してきた。にもかかわらず、公衆衛生上の緊急事態準備体制と対応能力が、医療など公衆衛生分野で行われているように、エビデンスに基づいて全米レベルで包括的に評価されたことは今までない。本書ではそのような検証を行い、改善点を指摘する。
掲載元へのリンク(2020年7月発行予定、650ページ)
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報告書など:GAO議会証言「COVID-19-対応と関連する課題におけるFEMAの役割」
COVID-19による米国の死者数は10万人を超え、史上初めて全米50州で同時に大規模災害が宣言される事態となった。COVID-19対応におけるFEMAの役割と、GAOのこれまでの調査から予測される今後の課題、今後起こる可能性がある全米規模の生物学的事態への対応について、GAO国土安全保障・司法課長のクリス・P・カリー氏が7月14日、米下院国土安全保障委員会の監督・管理・説明責任小委員会および緊急事態準備・対応・復旧小委員会で証言した。
掲載元へのリンク(2020年7月14日発行、20ページ)
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報告書など:GAO報告書「2018年の太平洋沿岸の災害―FEMAの災害対応・復旧の取り組みに関する予備考察」
ハワイ州、グアム準州、北マリアナ諸島自治連邦区は2018年、台風、地震、地滑り、火山噴火といった自然災害に悩まされた。2020年5月時点で7億8800万ドル(840億円)の災害支援金の約63パーセントが使用済みである。FEMAの災害対応は相応に効果的であったと考えられるが、復旧の取り組みの一部については、契約上の問題や人手不足が妨げとなった。
掲載元へのリンク(2020年7月8日公表、28ページ)
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報告書など:GAO報告書「科学技術スポットライト―COVID-19の集団免疫」
集団免疫は人口の大半(70-90パーセント)が感染症に対する免疫を獲得した場合に得られると考えられている。感染による自然面疫またはワクチン接種によって得られ、感染症の拡大を弱め、または止めることができるが、集団免疫が得られる前に多くの人が死亡するおそれもある。今のところ感染によりどれだけの免疫が得られるのか、再感染は免れるのかといった事柄に関するデータが不十分であり、COVID-19に対する集団免疫がいかに得られるのかは不透明である。
掲載元へのリンク(2020年7月7日公表、2ページ)
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報告書など:GAO議会証言「連邦政府職員―省庁がパンデミックの最中に職員を再び出勤させる際の主な検討事項」
連邦省庁がCOVID-19パンデミックの最中に、職員を再び出勤させる際や、テレワークを業務継続に役立てるために検討すべき事項について、GAOの戦略課題課長のJ・クリストファー・ミーム氏が6月25日、米下院監督・改革委員会で証言した。
掲載元へのリンク(2020年6月25日、15ページ)
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報告書など:GAO議会証言「空の旅と感染症―連邦政府の準備体制計画作成に必要な研究と行動の現況」
2015年のエボラ出血熱感染拡大時、GAOは運輸省に対して、空の旅による感染拡大を抑えるための全国的・包括的な準備体制を計画することを推奨した。しかし、運輸省はまだその計画をしていない。そうした準備体制の計画があれば、新型コロナウイルス感染拡大にあたり、乗客のスクリーニングなどの問題に取り組むうえで、公衆衛生機関と航空業界はより円滑な調整ができたはずだ。また、連邦航空局も機内や空港での感染について十分研究していない。GAOの物理的インフラ課長ヘザー・クラウゼ氏が6月23日、米下院科学・宇宙・技術委員会宇宙・航空小委員会で証言した。
掲載元へのリンク(2020年6月23日発行、16ページ)
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報告書など:GAO報告書「COVID-19―連邦政府の対応と復興努力を改善する機会」
米議会はCOVID-19に対応するため2.6兆ドル(280兆円)の緊急支援金を国民、企業、医療部門、州・自治体に割り当てた。この支援金を連邦政府省庁はどのように使っているのか、GAO(米議会の政府監査院)が調査した。中小企業庁が詐欺のリスクを考慮せずに貸し付けを行い、ローンの監督の計画していないこと、国税庁と財務省がすでに死亡した国民に支援金を給付していたことなど問題点が散見された。
掲載元へのリンク(2020年6月25日発行)
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報告書など:FEMA「パンデミックの際の準備体制―演習開始のためのキット」
パンデミック下で起きる災害に対応するには困難が伴う。環境が変わっても、災害前、最中、その後に人々を支援するというFEMAの使命は変わらない。州・自治体・企業・NGOに対し、パンデミックの中でもあらゆる災害に備えるためのリモートワークショップを行うためのリソースとして作成された手引。
掲載元へのリンク(2020年6月1日公表)
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