5月分
ニュース:米、ファイザー社製ワクチンの5-11歳児への追加接種承認
米国の食品医薬品局(FDA)は、ファイザー社・ビオンテック社の新型コロナウイルスワクチンを5歳から11歳の子どもに追加接種することを承認した。前回の接種から5か月以上経過した子どもが対象となる。
(2022年5月18日)
(2022年5月18日)
ニュース:欧米でサル痘感染者を確認
米マサチューセッツ州在住で最近カナダから帰国した男性に、サル痘の感染が確認されたことを同州公衆衛生局が発表した。カナダではまだ疑い例の中に感染は確認されていないが、英国、ポルトガル、スペインではすでに複数の感染例が確認されている。米疾病予防管理センター(CDC)は、欧州と往来の多い米国でも今後、感染例が増えると予測している。サル痘に感染すると発熱、悪寒、体の痛み、リンパ節の腫れなどインフルエンザと似た症状が出た後、水痘のように発疹し、まれに重症化することもある。通常は中央および西部アフリカで感染報告例が多い。サル痘には西アフリカ型と中央アフリカ型があるが、今回流行しているのは死亡率1%で症状が比較的軽度な西アフリカ型とみられている。
(2022年5月18日)
(2022年5月18日)
ニュース:米ニューメキシコ州で林野火災続く
米ニューメキシコ州で4月6日と4月19日に始まり、5月3日に合流したカーフ・キャニオン/ハーミッツ・ピーク火災が鎮まっていない。5月16日までに焼失した範囲は29万8000エーカー(1206平方キロ)を越え、米国南西部における史上最大の林野火災となった。南西部では7月のモンスーンシーズンに先立ち林野火災発生の確率が高まり、今年は長く続く干ばつ、高温、強風などの要素が相まって1か月以上早く林野火災が始まった。今年2月にはコロンビア大学ラモント・ドハティ地球観測研究所の研究者が、2000-21年の南西部の干ばつは少なくとも西暦800年以後で最悪のものであり、大規模林野火災が起きる条件がそろっているとの研究結果をネイチャー・クライメート・チェンジ誌に発表している。
(2022年5月17日)
(2022年5月17日)
ニュース:コロナ死者の半数は助かった可能性―ワクチン接種の重要性に再焦点
新型コロナウイルス感染によって2021年1月以降に米国で死亡した人の半数は、ワクチン接種を受けていれば助かったであろうとする研究結果が、ブラウン大学とハーバード大学の公衆衛生学部によって発表された。少なくとも31万8000人の命が救われたはずで、とくにウェストバージニア州、ワイオミング州、テネシー州、ケンタッキー州、オクラホマ州ではワクチン接種が進んでいれば死者数がより少なかったと考えられる。研究結果は、米国の新型コロナウイルスによる死者が100万人を超えたとの統計が出た直後に発表された。
(2022年5月16日)
(2022年5月16日)
ニュース:NY州のスーパーで銃乱射、10人死亡
5月14日、ニューヨーク州西部バッファローのスーパーマーケットで男が銃を乱射、13人が撃たれ、10人が死亡した。容疑者は18歳の白人の男で、ヘルメットにカメラを装着し、銃撃の映像をライブ配信していた。容疑者がインターネット上に投稿した文書など、すでに明らかになっている証拠から、黒人の多い店を狙った憎悪犯罪とみられる。
(2022年5月15日)
(2022年5月15日)
ニュース:小児急性肝炎が世界各地で多数報告
米国の疾病予防管理センター(CDC)は、原因不明の小児急性肝炎が世界中で400件以上立て続けに報告されていることを受け、注意を喚起した。原因は不明で、A型、B型、C型肝炎のウイルスには陰性反応を示しているものの、ふつうは風邪やインフルエンザのような症状を引き起こすアデノウイルスへの陽性反応が認められた症例が多数報告されている。アデノウイルスだけでは健康な子どもに肝炎を引き起こすようなことはないため、他の要因と組み合わさって異なる炎症が起きている可能性が指摘されているが、新型コロナウイルスワクチンが影響しているおそれはないことが、今までの解析結果から判明している。
(2022年5月6日)
(2022年5月6日)
ニュース:米当局がジョンソンエンドジョンソン社のワクチンの使用を制限
米国の食品医薬品局(FDA)は、ジョンソンエンドジョンソン社製の新型コロナウイルスワクチンの使用を、他社のワクチンを接種できない成人に限ることを決定した。9件の死亡を含む60件の報告例から、生命の危険をもたらす血液凝固を引き起こすおそれがあると判断した。
(2022年5月6日)
(2022年5月6日)
ニュース:新型コロナ関連死者、世界で1490万人に
世界保健機関(WHO)が新たに発表した推計によると、新型コロナウイルスを直接・間接の原因とする2021年末時点での死者数は世界で約1490万人に上るという。この数は超過死亡をもとに算出され、従来報告されていた600万人の2倍を超える。超過死亡の85%は南アジア、ヨーロッパ、南北アメリカで、10か国に7割が集中している。WHOは、公衆衛生上の危機が発生したとき基本的な医療サービスを維持できる、回復力のある医療システムに各国が投資する必要があると指摘している。
(2022年5月5日)
(2022年5月5日)
ニュース:機能獲得型研究に対する米政府の指針を求める声
米国立衛生研究所(NIH)が4月27日に主催した公聴会で、米政府の資金を受けて行われる病原体の研究に対し、より明確な指針を求める声がバイオセキュリティ専門家たちから上がったと、ネイチャー誌が報じた。病原体に操作を加えて感染力を高める機能獲得型研究は、病原体の進化のしくみやその対策を解き明かすのに有効だが、病原体が研究所から誤って流出したり、兵器化されたりするおそれがつきまとう。専門家は、米当局が機能獲得型研究の価値とリスクを比較衡量するための判断基準を示しておらず、重大事故が起きてからでは遅いという。
(2022年5月3日)
(2022年5月3日)
ニュース:米地質調査所とエネルギー省が林野火災予測のモデルを作成
米国地質調査所(USGS)とエネルギー省ロスアラモス国立研究所は、さまざまな状況における林野火災の延焼を予測する高度なコンピュータモデルを共同で作成する。消防その他の危機管理組織の林野火災対応計画や、火災の影響の研究に役立つことが期待される。
(2022年4月25日)
(2022年4月25日)
ニュース:コンゴ民主共和国で再びエボラ出血熱流行
コンゴ民主共和国保健省は4月23日、北西部の赤道州ムバンダカ地区でエボラ出血熱の流行が発生したと宣言した。その時点で2人の感染が確認され、2人とも後に死亡した。同国のエボラ出血熱流行は、1976年の1回目から数えて今回で14回目。2017年以降は毎年流行が確認され、より頻繁に流行している。コンゴ川流域の熱帯雨林はアマゾン川流域の次に広いが、森林伐採などによりウイルスを媒介するコウモリやサルと人間の居住地が近づいていることに原因があるのではないかと、ランセット誌は報じている。
(2022年4月24日)
(2022年4月24日)
技術研究情報:欧米の大気汚染減少によりハリケーンが増えた
欧州と米国で粒子状物質による大気汚染が減った影響で、北大西洋で熱帯低気圧の発生が増えており、逆に南半球では減ったことがScience Advances誌に発表された国立大洋海気庁(NOAA)の研究結果で明らかになった。逆に、アジアにおける粒子状物質による大気汚染の増加は、太平洋北西部で熱帯低気圧の発生を減らしているという。粒子状物質による大気汚染の改善は、健康リスクを減らしてきたが、それは必ずしも熱帯低気圧の危険を減らすわけではないという意外な結果が出た。
(2022年5月13日)
(2022年5月13日)
技術研究情報:地球温暖化と感染症拡大の関係性を指摘
地球温暖化が進むにつれて野生動物は移住を余儀なくされ、人の生活圏に入り込むケースが増え、病原体が動物から人に伝染し、次なるパンデミックを引き起こす可能性が高まるとする研究結果を、米ジョージタウン大学などの科学者が発表した。世界の哺乳動物3139種の移住と土地利用の変化のシミュレーションを行い、2070年までにウイルスの人への伝染が4000回起きると予測した。その過半数はコウモリから起きる。生態系はすでに変化を始めており、今世紀の地球の平均気温上昇を2度以下に抑えても人への感染は減らないとして、対策としてはウイルスの監視・発見と動物の移住の追跡を提言している。研究結果は4月28日付のネイチャー誌に掲載された。
【関連リンク】
https://www.nature.com/articles/s41586-022-04788-w
(2022年4月28日)
【関連リンク】
https://www.nature.com/articles/s41586-022-04788-w
(2022年4月28日)
技術研究情報:人為的気候変動により北大西洋ハリケーンの降雨量が増加
2020年の北大西洋ハリケーンシーズンには史上最多の30個の熱帯暴風が命名され、そのうち12個が米本土に上陸した。北大西洋の海面温度は1850年と比べて0.4-0.9度高い。米ストーニーブルック大学などの科学者は、熱帯暴風とハリケーンにおける極端に降雨の多い(第99百分位の)3時間と3日間の降水量について、海面温度が1850年から上がっていなかった場合のシミュレーションを実測値と比べ、人為的気候変動の影響を分析した。人為的気候変動は熱帯暴風の極端に降雨の多い3時間の降水量を10%、同じく3日間の降水量を5%増やし、ハリケーンの極端に降雨の多い3時間の降水量を11%、同じく3日間の降水量を8%増やしたという。論文はネイチャー・コミュニケーションズ誌に掲載された。
【関連リンク】
https://www.nature.com/articles/s41467-022-29379-1
(2022年4月26日)
【関連リンク】
https://www.nature.com/articles/s41467-022-29379-1
(2022年4月26日)
技術研究情報:温暖化を止めるため日射を減らすとマラリアが増える地域もある
気候変動の程度と影響を減らす工学的方法(気候工学、ジオエンジニアリング)の一種として、太陽光の一部を遮蔽・反射する太陽放射管理が注目されているが、健康への影響はほとんどわかっていない。太陽放射管理を行うと、熱帯の一部ではマラリアが減るものの、他の地域では増えるおそれがあると指摘する、米ジョージタウン大学などの科学者の論文が、ネイチャー・コミュニケーションズ誌に掲載された。太陽放射管理は熱帯の気温を下げる効果が高いと考えられるが、マラリアを感染性は気温25度ほどでもっとも高い。熱帯の気温を下げると、アフリカ東部の高地へのマラリアの拡大を防ぐ効果を期待できるものの、サハラ以南のアフリカの低地や南アジアでは感染が拡大するおそれがある。マラリア感染リスクの高い人口は、気候工学を実施しなければ温暖化により10億人減ると予測されているが、太陽放射管理を行うと、この効果はゼロになるという。論文は、気候工学が全人類の健康を改善するのではなく、途上国の間のトレードオフを強いるという可能性を指摘している。
【関連リンク】
https://www.nature.com/articles/s41467-022-29613-w
(2022年4月20日)
【関連リンク】
https://www.nature.com/articles/s41467-022-29613-w
(2022年4月20日)
技術研究情報:洪水予測地図を機械学習で更新
FEMA(連邦危機管理庁)は減災のために氾濫原の地図を作成しているが、不完全な情報、土地利用の変化、気候変動などのため、地図上でリスクが高いと記された場所と、実際の被災地に違いが生じている。ノースカロライナ州立大学の研究者が、洪水の被害を受ける確率の分布と要因を、公開されている地理空間データセットとランダムフォレスト・アルゴリズムを用いて分析したところ、14年間に100万平方マイル以上の土地が被災する可能性が非常に高いとの結果を得た。これはFEMAの洪水予測地図で特定されている洪水リスク地域より79万平方マイルも広い。論文はEnvironmental Research Letters誌に掲載された。FEMAは全米洪水被害保険額地図に毎年の維持費だけで最大4.8億ドル(620億円)も費やしているが、機械学習を用いて洪水リスクを予測すると、条件の変化や新情報に応じて、費用対効果のよい方法で地図を更新できるという。
【関連リンク】
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1748-9326/ac4f0f
(2022年4月20日)
【関連リンク】
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1748-9326/ac4f0f
(2022年4月20日)
報告書など:GAO報告書「災害回復力―全米準備体制を向上させる好機」
災害回復力に対する投資は、将来の災害の影響や被害額を減らすことにつながる。災害準備体制と回復力を向上させるために米政府が実行可能な事柄について、GAO(米議会の政府監査院)の国土安全保障省・司法省担当官が、下院国土安全保障委員会の緊急事態準備・対応・復興小委員会で証言した。
【関連リンク】
https://www.gao.gov/products/gao-22-106046
(2022年5月17日、17ページ)
【関連リンク】
https://www.gao.gov/products/gao-22-106046
(2022年5月17日、17ページ)
報告書など:全米アカデミーズ「パンデミック後の世界に向けて――COVID-19から得られた現在と未来への教訓」
新型コロナウイルス感染症から世界と米国で得られた教訓を総括するため、全米アカデミーズの微生物脅威フォーラムは2021年に2回のオンラインワークショップを開催した。1回目は、保健的・社会的要因のシナジー(相乗効果)に着目する「シンデミック」という視点から新型コロナウイルス対策を俯瞰することの意義と、世界の復興にとっての含意を主題とした。2回目はより広く、現在進行中のパンデミック対応の教訓と新しいデータのうち、現行の医療システムに取り入れると将来の感染症流行に対する回復力と準備体制の改善に役立つものを取り上げた。
【関連リンク】
https://nap.nationalacademies.org/catalog/26556/
(2022年5月発行、110ページ)
【関連リンク】
https://nap.nationalacademies.org/catalog/26556/
(2022年5月発行、110ページ)
報告書など:全米アカデミーズ「政策決定のための新型コロナ関連の監視方法を評価する」
新型コロナウイルスに対するワクチンや治療薬が開発され、経済活動が再開し、感染対策が緩和されるなど、状況の変化に応じて、入手可能なデータの種類が変化してきた。政策決定に利用できる新たなデータ指標と監視戦略について解説する。
【関連リンク】
https://nap.nationalacademies.org/catalog/26578/
(2022年5月発行)
【関連リンク】
https://nap.nationalacademies.org/catalog/26578/
(2022年5月発行)
報告書など:FEMA「化学インシデント影響管理の計画と意思決定の枠組み」(草稿)
広い地域に危険を及ぼす有毒化学物質の大規模流出事故が米国内で起きた場合の対応や復旧作業に必要となるリスク評価、計画、措置の実行について、官民の組織内の危機管理担当者や意思決定者に向けた枠組の草稿。6月3日まで一般からのコメントを受け付けている。
【関連リンク】
https://www.fema.gov/sites/default/files/documents/fema_planning-framework-chemical-incident-consequence-management.pdf
(2022年5月発行、190ページ)
【関連リンク】
https://www.fema.gov/sites/default/files/documents/fema_planning-framework-chemical-incident-consequence-management.pdf
(2022年5月発行、190ページ)
報告書など:国連防災機関「災害リスク削減に関するグローバル評価報告書 リスクに直面する世界――回復力のある未来のために統治を変革する」
各国の現在の社会的・政治的・経済的選択は、災害回復力を構築し、気候変動対策を行い、持続可能な発展の道を開くという約束に反している。進路を変えるためには、統治システムが何に価値を置き、システムのリスクをどのように理解し対処するのかを変革する必要がある。1)長期的リスクを含めリスクの実際の費用を計算に入れるように金融システムを修正すること、2)リスクに関する判断の心理を計算に入れて、行動を促すようにシステムを設計すること、3)縦割りを越えてリスクを管理し、当事者と対話するように統治と金融のシステムを再構成することを推奨する。
【関連リンク】
https://www.undrr.org/gar2022-our-world-risk#container-downloads
(2022年5月発行、256ページ)
【関連リンク】
https://www.undrr.org/gar2022-our-world-risk#container-downloads
(2022年5月発行、256ページ)
報告書など:GAO報告書「COVID-19―食品医薬品局は検査キットを利用可能にする措置をとったが、今後の公衆衛生上の緊急事態に備える方針が必要」
米国の食品医薬品局(FDA)は、新型コロナウイルス検査キットの供給量を増やすことを優先したので、緊急使用が承認されていない検査キットを検査機関が使用することに反対しなかった。その後の審査の結果、一部のキットは緊急使用が承認され、ほかは信頼性の低さやデータの問題を理由に承認されなかった。将来、公衆衛生上の緊急事態に際して未承認の検査キットの利用を食品医薬品局が容認するのか不明だ。GAOでは同局が未承認の検査キットの利用を容認するための条件と、容認を取り下げるための条件を含む方針を策定することを推奨し、保健社会福祉省は同意した。
【関連リンク】
https://www.gao.gov/products/gao-22-104266
(2022年5月12日、52ページ)
【関連リンク】
https://www.gao.gov/products/gao-22-104266
(2022年5月12日、52ページ)