7月分
ニュース:米国防長官の側近がまた1人退任
米国のヘグセス国防長官の上級顧問であるジャスティン・ファルチャー氏が退任した。ヘグセス長官の顧問の退任は、長官就任後6か月で6人目であり、側近が団結しないことが目立っている。ファルチャー氏はイーロン・マスク氏が率いた「政府効率化省(DOGE)」の一員として政権に加わり、4月に解任された上級顧問3名と入れ替わりに採用された。ワシントンポスト紙の取材に対し、もともと米政府での勤務は6か月間と決めていたと述べている。しかし、同紙は7月15日、ファルチャー氏がDOGEの国防総省担当チームリーダーと争い、彼のためにヘグセス長官が介入する騒動があったと報じていた。
(2025年7月19日)
(2025年7月19日)
ニュース:マイクロソフト社が米国防総省クラウドから中国拠点の技術者を外す
マイクロソフト社は米国防総省のクラウドコンピューティングを支援する事業から、自社の中国拠点の技術者を外すと声明した。同社の中国拠点の技術者が、米国人の監督をほとんど受けないでこの事業を担当していた慣行を、調査報道メディアのプロパブリカが7月15日にスクープし、安全保障上の懸念が浮上していた。ヘグセス国防長官は、中国を拠点とする技術者が米軍のクラウドサービスに関与することは許されないとして、国防総省のクラウド契約を総点検するよう指示した。
(2025年7月18日)
(2025年7月18日)
ニュース:パキスタン豪雨で200人以上死亡
パキスタンのカイバル・パクトゥンクワ州で6月下旬からモンスーン前の豪雨が降り、同州のスワート渓谷や下流のパンジャブ州で鉄砲水により200人以上が死亡した。建物の倒壊による死者が多い。
(2025年7月18日)
(2025年7月18日)
ニュース:米グランド・キャニオンで林野火災が延焼
米アリゾナ州グランド・キャニオン国立公園北口の歴史的地区ノース・リムで7月4日、落雷により林野火災が発生した。4日後、国立公園局はこの火災を直ちに消すのではなく、封じ込めて過密な植生を燃やす方針をとった。しかし、出火から7日後、強風・高温・乾燥のため46平方キロメートルに延焼し、消火することになり、ドラゴン・ブラボー火災と名付けられた。歴史的なグランド・キャニオン・ロッジなど建造物80棟が焼失した。同州のホッブス知事は、林野火災が延焼しやすい夏季に初期消火しなかった国立公園局の判断について調査を求めている。
(2025年7月16日)
(2025年7月16日)
ニュース:米20州がトランプ政権を提訴 災害対策助成金打ち切りを巡り
ニュージャージーなど米国の20州は、地域社会を自然災害から守るための「回復力あるインフラと地域社会の構築(BRIC)」という助成事業を、連邦危機管理庁(FEMA)が議会の承認なく廃止したことについて、同庁、リチャードソン同庁長官、ノーム国土安全保障長官および国をボストン連邦地裁判所に提訴した。
(2025年7月16日)
(2025年7月16日)
ニュース:テキサス州は米政府の洪水対策交付金を使わず、手続きに課題
米テキサス州は、過去10年間に米政府から洪水減災のために交付された資金のうち2億2500万ドル(300億円)を使わず、米政府に返金していた。政治ニュースサイトのポリティコが米政府の記録を分析して明らかになった。また、2017年のハリケーン・ハービーによる被災後、減災のため交付された8億2000億ドル(940億円)のうち、62%の5億500億ドルを使っていなかった(これは今も使用可能)。FEMA(連邦危機管理庁)の減災交付金を使うためには、州・自治体または契約業者が、事業の実施可能性、環境保護等の法令との適合性、財政的合理性を示す詳しい計画をFEMAに提出したり、州・自治体が広範な減災計画を作成したりする必要がある。それゆえ、減災交付金の一部を使わない州は珍しくない。
(2025年7月14日)
(2025年7月14日)
ニュース:FEMAはテキサス州洪水被災者の電話の過半数に応答せず
FEMA(米連邦危機管理庁)はテキサス州中部洪水被災者からの支援金を申請する電話のほぼ3分の2に応答できなかったことが、ニューヨークタイムズ紙が入手した文書で明らかになった。FEMAの被災者コールセンター要員数百人の契約が7月5日に満了となったが、FEMAの上級機関である国土安全保障省のノーム長官は10万ドルを超える支出に自身の承認を要件としており、同10日まで契約を更新しなかった。
(2025年7月11日)
(2025年7月11日)
ニュース:FEMA(米連邦危機管理庁)存続か
米トランプ政権はFEMA(連邦危機管理庁)廃止を公言して職員の早期退職を進めてきたが、テキサス州中部洪水を受けて風向きが変わってきた。ホワイトハウス高官はワシントンポスト紙の取材に対し、FEMAを廃止するのではなく、災害対応を州が主導し知事らが責任を負う体制に再編するなかで「イメージを変える」と述べた。
(2025年7月11日)
(2025年7月11日)
ニュース:今夏の欧州の航空便遅延は過去最悪レベルとの予測
今夏の欧州の旅客航空は、航空管制官の人手不足とストライキ、林野火災、高需要のため、かつてなく遅延するおそれが強いというEU当局者の見方をフィナンシャル・タイムズ紙が報じた。欧州航空航法安全機構(ユーロコントロール)によると、今年1-3 月の航空便数も遅延も前年同期より5%増えた。7月3-4日にはフランスの航空管制官が設備更新と人員増を要求してストを打ったので、3717便が遅延、1422便が欠航し、乗客100万人以上に影響した。
(2025年7月9日)
(2025年7月9日)
ニュース:AIを用いて米国務長官になりすました者が米国内外の高官に接触
AIを用いてルビオ米国務長官の声と文体をまねてなりすました者が3か国の外相、米国の州知事1名、米連邦議員1名に音声とテキストメッセージを送って接触していた。ワシントンポスト紙が米政府高官への取材と国務省公電をもとに報じた。この詐称者は6月中旬、民間アプリ「シグナル」にルビオ長官を騙るアカウントを作り、相手のシグナルアカウントに送信したが、相手が返信したのかは不明だという。この種のなりすましに高度な技術は不要だが、データセキュリティに不注意な当局者がいるので成功率が高く、対策はシグナルのように部外者が入れるチャンネルを公用に使わないことだと、デジタル・フォレンジック専門家は指摘する。
(2025年7月9日)
(2025年7月9日)
ニュース:米国の麻疹感染者が2000年以降で最多
今年の米国における麻疹の感染件数が、2000年以降でもっとも多かった19年の1274件を上回ったと、疾病予防管理センター(CDC)が発表した。WHO(世界保健機関)は2000年、米国における麻疹ウイルスの伝染が12か月以上途絶えているとして排除状態を認定した。しかし、その後も感染がなくなった年はなく、WHOは2018年、反ワクチン運動の影響により接種率が低下し、感染件数が増えたと報告している。今年の流行は、テキサス州西部の接種率の低いメノナイト宗派の町から38州に広がっており、患者の92%がMMRワクチン未接種または接種したのか不明だという。米国で麻疹による死者(3人)が出たのは10年ぶり。米国の麻疹排除状態の認定は、2019年に取り消し寸前だったので、今後取り消される可能性がある。
(2025年7月9日)
(2025年7月9日)
ニュース:欧州で記録的な熱波
欧州の熱波により、スペインとポルトガルでは気温が46度を超え、他の10か国も気温の最高記録を更新した。ロンドン大学衛星熱帯医学大学院とインペリアル・カレッジ・ロンドンの分析によると、この熱波により6月23日から7月2日までにロンドンなど欧州12都市で2300人以上が死亡しており、人為的気候変動がなくて気温が2-4度低かった場合の推定死者数(800人)のほぼ3倍にのぼる。
(2025年7月9日)
(2025年7月9日)
ニュース:米テキサス州で大洪水、100人超死亡、官民の安全対策に疑問の声
米テキサス州中央部で大洪水が発生し、カー郡だけで104人以上が死亡した。7月4日朝、グアダルーペ川の水位が10メートル以上上がって氾濫、沿岸の女子サマーキャンプ「キャンプ・ミスティック」に参加していた多数の児童やリーダーが流された。米国立気象局は3日13時18分に洪水注意報、4日1時46分に洪水警報を発していたが、川辺のキャンプは避難していなかった。カー郡はテキサス州を横断する「鉄砲水地帯」に位置しており、警報サイレン等の設置を検討したこともあったが、費用を理由に設置していなかった。国立気象局は警報・避難勧告を多数発したが、過去の警報と比べると遅く、降水量を過少に予報したと批判されている。同局はトランプ政権の「政府効率化省」の指示により約600人の職員を早期退職させており、オースティン=サンアントニオ気象台は、危機管理当局との窓口である警報調整気象官を欠いていた。FEMA(米連邦危機管理庁)が2011年に指定した洪水危険地域について、キャンプ・ミスティックは自らの建物を除外するよう求め、FEMAは20年までに30軒を除外し、今回の洪水の時点で12軒以上が洪水危険地域に残っていた。洪水危険地域の建物には規制や保険の加入義務があるので、キャンプ運営者には除外を申請する経済的誘因があった。また、テキサス州当局は7月2日、キャンプ・ミスティックの防災計画を承認していた。
(2025年7月8日)
(2025年7月8日)
ニュース:ハリケーンシーズンに米国防総省が気象画像の提供を打ち切る
米国周辺の熱帯低気圧を夜間に観測するため利用されている、国防総省の気象衛星が撮影したマイクロ波画像について、同省は7月31日までに提供を打ち切ると、米海洋大気庁(NOAA)に通告した。6月25日には、サイバーセキュリティを理由に6月30日までに提供を打ち切ると通告したが、利用者の懸念を受けて延期した。NOAAの報道官は、他のデータ源で最高水準の天気予報をおこなえるという。国防気象衛星は極地の海氷に関する主なデータ源でもある。
(2025年7月1日)
(2025年7月1日)
ニュース:米アイダホ州の林野火災現場で消防士が銃撃され3人死亡
米アイダホ州北部コー・ダリーン市のハイキングスポットであるキャンフィールド山で6月29日に林野火災が発生し、現場にいた男(20歳)が駆け付けた消防士と会話した後、散弾銃を発砲して2人を射殺、1人を負傷させた。警察官300人以上が出動し、銃撃戦となった。犯人の遺体と銃は翌30日に発見された。当局は犯人が自殺したとみている。キャンフィールド山では自然発火は珍しいので、当局は犯人が消防士をおびき寄せるため放火したとみている。
(2025年6月30日)
(2025年6月30日)
ニュース:米保健福祉長官がGaviワクチンアライアンスへの資金提供を停止
Gaviワクチンアライアンスは、低所得国の予防接種率を向上させることにより、人命と健康を守るための官民連携パートナーシップだが、米国のケネディ保健福祉長官は支援国会議へのビデオメッセージで、資金提供を停止すると通告した。ケネディ長官は、Gaviが小児ワクチン接種のリスクを無視していると、根拠を示さないで非難した。Gaviは反論声明を出し、ワクチン選定に関する全ての判断は、WHO(世界保健機関)の専門家による厳格な独立した審査を経ていると説明した。米国はGaviに対する第3位の資金提供国であり、専門家らは、資金提供の停止が数百万人以上の小児の命を脅かすと警鐘を鳴らしている。
(2025年6月26日)
(2025年6月26日)
ニュース:FEMA縮小を補う米国の災害ボランティア団体
2024年秋から、ハリケーン・へリーン被災地への米政府の対応が不十分だと感じた市民が各地で災害ボランティア団体を作って活動している。FEMA(連邦危機管理庁)のように長期的な復旧を支援する力はないものの、トランプ政権によるFEMAの人員と予算の縮小を受けて、捜索救助や支援物資の配送における役割が大きくなるとみられる。ケンタッキー州の竜巻被災地における活動や、テネシー州でおこなわれた合同訓練「レスキューHQ」をニューヨークタイムズが取材して報じた。信仰心が篤く、軍歴のあるボランティアが多いという。
(2025年6月27日)
(2025年6月27日)
ニュース:青少年ネオナチ運動が米国でソーシャルメディアを用いて拡大
総合格闘技クラブを装い、TikTokやTelegramといったソーシャルメディアを用いて青少年にヒトラーの言葉や白人至上主義を広めるネオナチ運動が勢力を拡大しているという調査結果を、民間団体「憎悪と過激主義に対するグローバル・プロジェクト(GPAHE)」が発表した。スポーツクラブを装う白人至上主義の細胞組織「アクティブ・クラブ」が2022年から欧米・豪州に広まっており、同じ目的で15-18歳の青少年を集める「ユース・クラブ」が米国の42州で活動しているという。ユース・クラブの過半数は今年2月以降、Telegramにチャンネルを開設した。
(2025年6月23日)
(2025年6月23日)
研究開発情報:林野火災減災・避難ゲームをUCサンタクルーズ校が開発
しばしば住宅地に延焼する林野火災に対し、市民の備えを高めるためのシミュレーションゲームを高めるためのシミュレーションゲームを、米カリフォルニア大学サンタクルーズ校の研究者が開発した。戸建て住宅を難燃化するためには、庭や外装から何を撤去してどの資材を使うか選ぶ必要がある。平時から非常持ち出し袋や避難計画を準備しておかなければ、いざという時に避難できない。避難を指示されたときは、何を持ち出して何を残すか、どの車で逃げるかといった選択を迫られる。すでに3つのゲームを開発しており、そのなかでこうした選択を経験することで、林野火災リスクへの個人の対応力を高め、地域での対話や行動変容を促すことをめざしている。
【関連リンク】
https://ucsc-wildfire-games.itch.io/wildfire-minigames-collection
(2025年7月3日)
【関連リンク】
https://ucsc-wildfire-games.itch.io/wildfire-minigames-collection
(2025年7月3日)
研究開発情報:地上で連鎖的に発生する自然災害のリスクモデル
従来、危機管理当局者や保険会社は過去の出来事に基づいて災害リスクを評価してきた。しかし、林野火災、洪水、土砂崩れなど地上で発生する災害は、1種類が起きると浸食や堆積物の移動を加速し、あとで加わる力に対して地形をより敏感な状態にすることで、連鎖的なハザード(危険因子)を形成し、別の災害のリスクを高める。それゆえ、気象モデルが大気の新しいデータで更新されているように、地上の災害の物理に基づいてハザードの進化を予測するコンピュータモデルが必要となっている。その枠組みを示す、インディアナ大学など18大学と米国地質調査所(USGS)の研究者による論文が、サイエンス誌に掲載された。衛星画像、無人機、LiDARなどで災害後の地形や植生の変化を追跡し、弛緩した土砂の動きのモデルにそのデータを加えると、次のハザードの発生場所を予測することができる。ハザードの予測は地域社会の回復力構築に役立つ。
【関連リンク】
https://doi.org/10.1126/science.adp9559
(2025年6月26日掲載)
【関連リンク】
https://doi.org/10.1126/science.adp9559
(2025年6月26日掲載)
研究開発情報:ワクチン接種率の低下で小児ら数千万人に命の危険
小児ワクチン接種率の世界的な停滞・低下により、数千万人が感染症で死亡するリスクを指摘する、世界最大規模の調査の分析結果が、医学誌ランセットに掲載された。接種率の停滞・低下の原因は、保健医療の不平等、新型コロナによる混乱、急増するワクチン不信と誤情報だという。1974年以降の小児ワクチン接種は1億5400万人の病死を防いだ。しかし、2010年以降、麻疹のワクチン接種率は204か国のうち100か国で低下し、36の高所得国のうち日米英仏伊など21か国ではジフテリア・破傷風・百日咳・結核・ポリオの少なくとも1つの接種率が低下している。WHO(世界保健機関)の「予防接種アジェンダ2030」は、3種混合ワクチン未接種児の半減などを目標としているが、メリハリのある公平な戦略によって接種を加速しなければ達成は困難だと警告している。この研究「世界の疾病の負担(GBD)」には、Gaviワクチンアライアンスとビル&メリンダ・ゲイツ財団が資金を提供した。
【関連リンク】
https://doi.org/10.1016/S0140-6736(25)01037-2
(2025年6月24日)
【関連リンク】
https://doi.org/10.1016/S0140-6736(25)01037-2
(2025年6月24日)
報告書など:GAO報告書「林野火災管理 予報・検知・減災・対応の技術」
林野火災の予報・検知・減災・対応に利用されている人工衛星・有人機・無人機・カメラ・空気環境センサーなどの技術、予報・対応のためのモデルのAIツールによる改良とその限界について、GAO(米議会の政府監査院)の科学・技術評価・分析担当責任者のカレン・ハワード博士が、下院天然資源委員会国有地小委員会で証言した。
【関連リンク】
https://www.gao.gov/products/gao-25-108589
(2025年6月26日発行、16ページ)
【関連リンク】
https://www.gao.gov/products/gao-25-108589
(2025年6月26日発行、16ページ)
報告書など:GAO報告書「漁業災害支援 プロセスは変わりつつあるが適時性とコミュニケーションに改善の余地あり」
米商務省の国家海洋漁業局が管轄する漁業災害支援制度は、ハリケーンや石油流出事故により漁業の収入・雇用が減った州や部族政府が利用できるが、支援金交付の遅さや、申請の処理状況に関するコミュニケーションの不足が課題となっている。2014年以降に申請された111件は交付まで平均3年かかっており、同局が最近承認した56件は、申請から交付まで1.3年ないし4.8年かかった。2022年の法改正により、各段階に明確な期間が設定され、財源が確保されれば1年強で交付される仕組みになった。州や部族政府の当局者は、依然として申請の処理が遅くて不透明で、申請時にどんな情報や計画を提出する必要があるのかわかりにくいと指摘している。GAO(米議会の政府監査院)は、国家海洋漁業局が申請プロセスについてより詳しい情報を利用者に提供することや、この事業に従事する人員数は十分なのか検討することを推奨し、同局は賛成した。
【関連リンク】
https://www.gao.gov/products/gao-25-107076
(2025年6月25日改訂版発行、60ページ)
【関連リンク】
https://www.gao.gov/products/gao-25-107076
(2025年6月25日改訂版発行、60ページ)