9月分
ニュース:米予防接種諮問委が高齢者への新型コロナワクチン接種勧奨を変更
米疾病管理予防センター(CDC)の予防接種諮問委員会(ACIP)は、65歳以上の高齢者に対する新型コロナウイルスワクチン接種の勧奨を取り下げ、期待できる利益とリスクを医療従事者と話し合ってから接種するよう勧める方針を全会一致で承認した。6か月以上64歳未満の人も、医療従事者に相談すれば接種できる。多くの米国人がこれまでおこなったように、薬局で医療従事者に相談しないで新型コロナワクチンを接種することは不可能になりそうだ。食品医薬品局(FDA)が8月27日、65歳以上の人と重症化リスクの高い64歳以下の人にだけ最新の新型コロナワクチンの接種を承認したことと矛盾する。ACIPが1964年に設置されて以来、CDCはACIPが示した方針のほとんどに従ってきたが、今回決議された方針は、CDC所長代行のジム・オニール氏が承認した後、発効する。現在のACIPはケネディ保健福祉長官が任命しており、ワクチンの安全性・有効性を否認する委員が多い。
(2025年9月19日)
(2025年9月19日)
ニュース:米国土安全保障省が3500万ドルの追加の災害支援を発表
米国土安全保障省のノーム長官は18日、自然災害からの復旧のためにほぼ3500万ドル(52億円)の追加の資金を州・自治体に提供すると発表した。支援金はFEMA(連邦危機管理庁)の公共支援事業を通じて、全米130の復旧事業に配分する。主な支援対象は、道路の補修、重要インフラの再建、がれきの除去といった作業のほか、災害中に生命・財産を守るためにとった緊急措置の費用を含む。
(2025年9月18日)
(2025年9月18日)
ニュース:米保守系活動家が銃撃され死亡
保守的な価値観を若者に広める活動を通じて、トランプ大統領再選に大きな役割を果たしたとされるチャーリー・カーク氏が9月10日、ユタ州オレム市のユタバレー大学でのイベントの最中に、ライフル銃弾1発で首を撃たれて死亡した。事件への関与を知った容疑者の家族が通報し、容疑者は翌11日逮捕された。この事件は、左翼テロリズムの脅威をトランプ政権と保守派が喧伝したり、カーク氏に対する暴力を容認するととられる公人の発言が発掘されて非難されたりするなど、さまざまな方面で大きな余波を生んでいる。増加傾向にある政治的暴力のさらなる悪化が懸念される。
(2025年9月10日)
(2025年9月10日)
ニュース:ネパールで大規模な反政府デモ、首相が辞任
ネパールの首都カトマンズで9月8日、主要なSNSへのアクセスを停止する政府の措置に抗議するデモが発生し、参加者と治安部隊が衝突、19人が死亡、500人以上が負傷した。政府はSNS運営企業に登録を要求していたが、登録しなかったInstagramやWhatsAppなど26の大手SNSへの国内からの接続を遮断した。これをきっかけに、長年の政府の汚職や縁故主義への抗議も若者を中心に急速に広がった。デモを受けて政府は8日にSNSへの接続遮断措置を撤回したが事態は収束せず、オリ首相は9日午後に辞任を表明した。デモの一部が暴徒化して行政・立法・司法の庁舎や政治家の邸宅が焼かれ、国の機能が停止している。
(2025年9月9日)
(2025年9月9日)
ニュース:米政府の大規模災害宣言が遅延する傾向、現政権で加速
米国で災害が発生してから国の支援が被災者に届くまでかかる日数が、1990-2000年代と比べて過去10年間に増えていると、AP通信の分析で明らかになった。州知事が連邦政府に要請してから大統領が大規模災害を宣言するまでかかる平均的な日数は、1990年代から2000年代初めまでは2週間以下だった。それが、過去10年間は民主党・共和党どちらの政権でも約3週間、今の第2期トランプ政権では1か月を超えている。大規模災害宣言が遅れると、被災者が生活費・一時宿泊・住宅修理などに国の支援を得るまで日にちがかかるだけでなく、州・自治体が国の支援を受けられるのかはっきりしない間、復旧作業が遅れることにもつながる。
(2025年9月9日)
(2025年9月9日)
ニュース:中国系ハッカー集団が米下院議員を装いサイバー攻撃か
米下院議員になりすまして業界団体・法律事務所・政府機関に送られたメールを、FBI(連邦捜査局)と議会警察が調査し、中国政府系ハッカー集団「APT41」がスパイウェアを送り込むためになりすましたと結論した。ウォールストリート・ジャーナル紙が報じた。ハッカー集団は、「合衆国と中国共産党の戦略的競争に関する下院特別委員会」委員長のジョン・モーレナール議員(共和党)になりすました。メールは、対中国制裁案への意見を求める文面によって添付ファイルを開かせ、相手のコンピュータに侵入しようとするものだった。しかし、発信アドレスが議会の公式アドレスでなかったことを受信者が疑って委員会スタッフに問い合わせ、発覚した。このメールは米中が貿易についてストックホルムで協議する数日前に送られており、協議に関する情報の入手を狙ったとみられる。
(2025年9月7日)
(2025年9月7日)
ニュース:米国防総省の副次的名称に「戦争省」を採用
米大統領令により、国防総省と国防長官の副次的名称として「戦争省」「戦争長官」が採用された。国防長官府や国防副長官・次官等の職名も同様の副次的名称を用いることができる。その理由として、防衛だけでなく、国のために戦争を戦って勝つ意思と即応能力を持つ国家としての立場を鮮明にし、力による平和を保障するためと大統領令は述べている。法律上の名称は、立法をおこなわないかぎり、国防総省・国防長官等で変わらない。大統領令の題は「デパートメント・オブ・ウォー(戦争省)の復活」だが、1789年に設置されたデパートメント・オブ・ウォーは、1798年の海軍省設置後、1947年に廃止されるまで陸軍のみを管理していたので、(旧)陸軍省と訳される。1947年に国家軍政省の傘下に現在の陸軍省(デパートメント・オブ・ジ・アーミー)・海軍省・空軍省が入り、国家軍政省は49年に国防総省に改称された。
(2025年9月5日)
(2025年9月5日)
ニュース:パキスタン洪水で死者900人超、避難民180万人
パキスタンでは今年6月から豪雨水害が続発している。8月20日以降はモンスーンにおいても異例の豪雨や、インダス川の支流であるラヴィ川・サトレジ川・チェナブ川のインドにおけるダムの緊急放流により、もっとも人口の多いパンジャブ州にも水害が及んだ。6月下旬以降、全国の死者は900人を超え、180万人以上が住居を失って避難している。パンジャブ州は小麦の主要な生産地なので、食料生産への影響も懸念される。パキスタンの豪雨が激しくなっている原因は気候変動だが、警報システムや減災インフラに対する政府支出の不足も指摘されている。
(2025年9月1日)
(2025年9月1日)
ニュース:アフガニスタン東部でM6.0の地震、死者2000人超
アフガニスタン東部のクナル州で8月31日、マグニチュード6.0の地震が発生、2000人以上が死亡、4000人以上が負傷した。被災地は同国の5州にわたり、大部分は山岳地帯なので、救助・支援は困難を極めると考えられる。
(2025年9月1日)
(2025年9月1日)
ニュース:スーダンで地すべり、死者1000人超
北東アフリカ・スーダン西部の中部ダルフール州で8月31日、大規模な地滑りが発生し、1000人以上が死亡した。8月末の豪雨により地盤が緩んでおり、マラー山脈のタラシン村では負傷者1人を除いて全員が死亡したとみられる。
(2025年9月1日)
(2025年9月1日)
ニュース:米国15地域で狂犬病が流行
米疾病予防管理センター(CDC)によると、過去12か月で6人が狂犬病により死亡し、近年で最多となった。CDCは米国の15の地域で狂犬病が流行しているとみて追跡調査をおこなっている。西部のキツネと全米のコウモリに感染が増えている。人口増加による住宅地の拡大と野生動物の生息域の縮小が、野生動物どうしの感染も人への感染も助長し、また、監視の改善により報告例が増えていると考えられる。
(2025年8月31日)
(2025年8月31日)
ニュース:米国家安全保障会議を縮小
米トランプ政権は国家安全保障会議(NSC)の役割を大幅に縮小している。近年の政権で400人ほどいたNSC職員は150人以下に減り、政策立案、大統領決定の実行の保証、外国政府との調整といった機能が縮小されている。国家安全保障の意思決定は大統領本人に集中し、即興的になっており、従来のプロセスは踏襲されていない。ウォールストリート・ジャーナル紙によると、今年6月のイラン核施設空爆は、中東諸国を担当する外交官に予告されず、彼らは空爆がイランの政権打倒を目的としているのか問われた場合の答えを準備できなかった。
(2025年8月30日)
(2025年8月30日)
ニュース:米トランプ政権、疫病対策トップを解任
米大統領府は8月27日、疾病管理予防センター(CDC)のスーザン・モナレズ所長の解任を発表した。モナレズ氏はケネディ保健福祉長官に辞任を求められていたが拒んでいた。CDC所長は2023年から上院承認人事となっており、モナレズ氏も7月に上院に承認されたばかりだったので、ケネディ長官には解任する権限がなかった。大統領府は解任理由に、「アメリカを再び健康にする(MAHA)」大統領の政策課題との不一致を挙げた。モナレズ氏の解任を受けて、CDCの幹部3人以上が、CDCの現状や予算削減計画に反対する姿勢を示して辞任した。
(2025年8月28日)
(2025年8月28日)
ニュース:FEMA弱体化を警告する議会宛書簡に署名した職員を休職
トランプ政権がFEMA(連邦危機管理庁)の予算・人員を大幅に減らし、災害対応の責任と費用を州に委譲しているので、米国の災害対応能力が弱体化していると警告する書簡を、一部の職員が8月25日に米議会に送り、外部のウェブサイトに公開した。36人が氏名を公開し、146人は報復を恐れて匿名で参加した。FEMAは翌26日夜、顕名の36人に、さらなる通知があるまで直ちに有給の休職とすると、電子メールで通知した。
(2025年8月26日)
(2025年8月26日)
ニュース:人獣共通寄生虫ラセンウジの症例を米国でも発見
ラセンウジバエは哺乳類と鳥類の傷口に卵を産みつけ、幼虫(ウジ)が寄生して生体組織を食べる。北米では2000年代前半に絶滅に成功したと考えられていたが、24年以降はメキシコで再び発見されている。カリブ海や南米の熱帯・亜熱帯に多い。米保健福祉省は24日、中米エルサルバドルから帰国したメリーランド州住民からラセンウジバエの寄生を発見したことを公表した。
(2025年8月25日)
(2025年8月25日)
ニュース:FEMAの災害支援申請に電子メールアドレスが必要となる
米国の災害被災者がFEMA(連邦危機管理庁)に支援を申請する際、電子メールアドレスが必要となったと、WIRED誌が報じた。今年3月の大統領令が示した、紙の書類による出納を廃止する方針に基づく。FEMA内部の決定に対し、一部の職員は、インターネットへのアクセスが限られた被災者が支援を申請しにくくなると指摘した。2023年時点で米国の世帯の12%はインターネット接続環境がなかった。接続環境を提供している図書館などの公共施設も、被災地では利用できないおそれが強い。
(2025年8月22日)
(2025年8月22日)
ニュース:米国防情報局長官を解任
ヘグセス米国防長官は22日、国防情報局(DIA)のジェフリー・クルーズ長官(空軍中将)を解任した。同局は外国・非国家主体の軍事的な意図と能力に関する情報を政策決定者に提供する。今年6月、米国のイラン核施設空爆に対する初期評価で、重要な設備を破壊することができず、攻撃はイランの核開発計画を数か月程度遅らせるにとどまると分析した。それは壊滅的損害を与えたとするトランプ大統領の主張と違ったので、大統領は情報機関の分析が誤りだと非難していた。政権と異なる分析を示した担当官が相次いで解任されている。ギャバ―ド国家情報長官は5月13日、ベネズエラのギャング組織が同国政府の指示を受けて米国で活動している様子はないと分析した国家情報会議(NIC)の幹部2人を、同国政府とギャングの関係は「常識」だとして解任した。ギャバ―ド長官が8月17日に秘密取扱資格を剥奪した情報機関職員・退職者・前政権関係者37人のなかには、情報コミュニティの選挙干渉対策責任者として、ロシアがトランプ大統領再選をめざして活動していると2020年に議会で証言した現職者も含まれている。
(2025年8月22日)
(2025年8月22日)
ニュース:米政府予算案に化学安全委員会なし
米国の化学産業事故の原因を調査する化学安全・ハザード調査委員会(通称「化学安全調査委員会」、CSB)について、トランプ政権は2026年度(25年10月-26年9月)予算案で予算を割り当てず、25年9月末までに緊急資金を使って業務を終了するよう指示した。化学安全委員会は執行権限こそないが、大半の企業は勧告に従ってきた。廃止されれば、化学産業事故の調査は主に環境保護庁と労働安全衛生庁が担うことになるが、両庁も予算と人員を減らされており、既存業務の能力が低下している。
(2025年8月21日)
(2025年8月21日)
報告書など:GAO報告書「災害支援に関する高リスクシリーズ 連邦政府人員の即応態勢」
2024年9-10月のハリケーン・へリーンおよびミルトン、25年1月のロサンゼルス近郊の林野火災に対し、FEMA(連邦危機管理庁)、陸軍工兵司令部、環境保護庁など連邦政府機関は数千人の職員を投入した。しかし、災害の同時多発、災害対応人員の不足、応援要員の訓練不足により、対応能力が限られた。24年11月1日にはFEMAの緊急事態管理要員のうち、派遣可能だったのはわずか4%にすぎなかった。この問題は長年続いており、災害による人手の需要は増えているので、GAO(米議会の政府監査院)は25年2月、「連邦政府の災害支援を現場へ届ける方法の改善」を高リスクリスト(浪費・詐欺・悪用・経営ミスのおそれがあるか再編の必要な国の事業)に加えた。その一方で行政府は25年1月以降、人員を減らしている。FEMA職員は1月1日に約2万5800人いたが、6月1日には約2万3350人に減った。現行の改革の間も、災害に対応するFEMAの責任は変わっていない。過去より少ない人員で、過去以上の数の災害に対応する状況が続けば、対応の有効性が低下するおそれがある。GAOは今後もこの点を注視していく。
【関連リンク】
https://www.gao.gov/products/gao-25-108598
(2025年8月11日発行、109ページ)
【関連リンク】
https://www.gao.gov/products/gao-25-108598
(2025年8月11日発行、109ページ)