10月分
ニュース:米政府保健機関に対する国民の信頼が低下
米政府のCDC(疾病予防管理センター)やFDA(食品医薬品局)といった保健機関に対する米国民の信頼が低下していることが、政治メディア・アクシオスとイプソス社による世論調査で明らかになった。CDCを信頼する国民の割合は、昨年12月の66%から10月は54%に減った。FDAに対しては、同じ期間に60%から52%に減った。トランプ大統領とケネディ保健福祉長官の政策が米国民の健康を改善したと回答した人の割合は19%、悪化させたと回答した人は41%、影響していないと回答した人は36%だった。
(2025年10月18日)
(2025年10月18日)
ニュース:FEMA解体に抗議する職員らが本部前でデモ
FEMA(米連邦危機管理庁)の現職・元職員らが、トランプ政権による人員削減や事業縮小に抗議するデモをワシントンの本部前でおこなった。参加者は「FEMA解体は人命を危険にさらす」と訴え、8月に公開書簡へ署名したのち停職処分となっている同僚の復職、リチャードソン長官代行の辞任、移民税関執行局(ICE)支援業務へのFEMA職員の割当の廃止を要求した。
(2025年10月17日)
(2025年10月17日)
ニュース:メキシコ大洪水で66人死亡、政府対応に批判
メキシコシティの東からメキシコ湾の間の地域で、10月6日から9日までの大雨による大規模な地すべりや河川の氾濫のため、66人以上が死亡、75人が行方不明となり、住宅10万戸が損壊・損傷した。メキシコ政府は捜索救助用の重機の手配などが遅れ、国民の批判の声が高まっている。前政権が汚職を理由に国家災害基金(Fonden)を廃止したことの影響も議論を呼んでいる。軍に依存した災害対応体制や、財源確保の不透明さが課題として浮上している。
(2025年10月17日)
(2025年10月17日)
ニュース:米国の民主党知事の州が公衆衛生連合、トランプ政権に対抗
米国の民主党知事の州のうち14州とグアム準州が、トランプ大統領やケネディ保健福祉長官の公衆衛生軽視に対抗するとして、「ガバナーズ・パブリック・ヘルス・アライアンス」を発足させた。14州のうちノースカロライナ以外のコロラド、カリフォルニア、コネティカット、デラウェア、ハワイ、イリノイ、メリーランド、マサチューセッツ、ニュージャージー、ニューヨーク、オレゴン、ロードアイランド、ワシントンは、州議会でも民主党が多数を占める。公衆衛生の脅威探知、緊急事態準備・対応、ガイダンス・政策、専門家の派遣で連携し、知事の政党を問わず、他の州の参加を歓迎するという。この連合は、民主党知事の州の協力を促す非営利団体GovActの支援を受け、マンディ・コーエン元CDC(疾病管理予防センター)所長ら専門家が助言している。
(2025年10月15日)
(2025年10月15日)
ニュース:米国で麻疹感染拡大続く
今年の米国で確認された麻疹患者は1596人を超えており、1992年より後ではもっとも多い。テキサス州当局は、今年の麻疹流行が始まった同州西部における流行の終息を8月18日に発表したが、同州でも他州でも未確認の市中感染はさらに多いと考えられる。麻疹の感染拡大を止めるためにはワクチンによる集団免疫が必要だが、集団免疫には接種率95%が必要だが、幼稚園児の接種率は全米平均92.7%に低下しており、さらに低い地域が多い。
(2025年10月15日)
(2025年10月15日)
ニュース:米政府閉鎖中の政府職員解雇に差止命令
予算失効による米政府閉鎖中に、職員を解雇して政府を縮小しようとするトランプ政権の試みに対し、官公庁労働組合(AFGEとAFSCME)が10月1日に訴訟を起こして要求していた差止命令を、カリフォルニア北部連邦地裁が同15日に下した。この間の10日、米疾病管理予防センター(CDC)の職員1300人以上が解雇をメールで通知され、約700人は翌日に解雇取消のメールを受信したが、他の約600人は解雇されそうになっていた。後者は議会への説明員、国民健康・栄養統計の担当者、ケネディ保健福祉長官の優先分野のはずの慢性病対策の担当者や、CDC図書館職員、今年8月のCDC本部銃撃事件被害者の精神保健支援担当者、同僚を解雇するため政府閉鎖中に出勤を命じられた人事担当者を含む。しかし、保健福祉省のニクソン報道官は、同省がバイデン前政権下で肥大し、予算は38%、職員は17%増えており、解雇を通知された全員が各自の部署によって不必要と指定されたと述べ、国民健康・栄養統計の担当者の解雇通知はすでに取り消したと主張した。
(2025年10月15日)
(2025年10月15日)
ニュース:米カリフォルニア州の林野火災被災者支援立法
ロサンゼルスにおける2025年1月の壊滅的な林野火災からの復旧・復興を支援するため、カリフォルニア州議会が超党派で制定した一連の州法に、ニューサム州知事が署名・公布した。焼失した住宅を再建するための建築許可手続を加速し、恒久的な住宅を建築中の敷地に住人が仮設住宅を建てて住むことを許可する。被災者の固定資産税を減免する。避難命令区域における略奪や初動要員の詐称の取締りを強化する。減災のため、低所得者が所有する住宅の屋根防火費用や、樹木の伐採による防火帯設置事業を補助する。
(2025年10月10日)
(2025年10月10日)
ニュース:米政府が45州への災害支援金109億ドルの支払いを中止
米トランプ政権は、FEMA(連邦危機管理庁)が8-9月に45州に提供することを計画していた災害支援金109億ドル(1兆6300億円)の支払いを中止した。災害支援金に関する9月15日付の報告書に「2026年会計年度に移行」と小さく記されていることを、政治メディア・ポリティコのエネルギー・環境ニュース部門が報じた。これは新型コロナウイルス感染症パンデミック対策の費用を払い戻すための資金だが、FEMAは109億ドルの借金がある状態で26年度を始めることになり、各州は当てにしていた資金がいつ振り込まれるのかわからないので、双方にとって災害に対応するための財政力への影響が大きい。このようにFEMAから州への支払いが中止されたことは、過去に例をみない。
(2025年10月7日)
(2025年10月7日)
ニュース:FEMAが州・自治体の緊急事態準備に34億ドル超
FEMA(米連邦危機管理庁)は州・自治体が天災、サイバーインシデント、テロへの備えを強化するため使い道を決められる資金として、非災害補助金事業を通じてほぼ35億ドル(5200億円)を配分したと発表した。消防など初動要員の採用・訓練、サイバー攻撃への対応計画、港湾・交通など重要インフラの防護、教会など非営利事業所のテロ対策、公衆警報システム、州・自治体自身のテロ・国際犯罪対策といった用途に充てられる。バイデン前政権との違いとして、「不法移民の高級ホテル入居、気候変動に関する選り好みの事業、米国民の利益に反する不適切な関係のある急進的団体」への支出を禁止している。
(2025年10月3日)
(2025年10月3日)
ニュース:米国立気象局、大幅な人員削減で通常業務に支障
米国立気象局は、トランプ政権下で人員を減らされ、天気予報など通常業務が困難になっている。今年2月までに、試用期間中の職員約100人が解雇され、その後、約500人が早期退職勧奨または他の方法による退職を選んだ。その結果、今年初めの職員約4300人の7分の1にあたるほぼ600人が離職した。同局の職員が4000人を割ったことは、過去30年以上なかった。ハリケーンシーズンが中盤を迎えているが、一部の気象台は24時間体制を維持できなくなり、観測気球の打ち上げを減らしている。24時間体制を続けている気象台では夜間当直が頻繁化している。気象台が天気予報に集中するために住民への広報・訓練を減らしている地域では、気象災害時の避難などに関する自治体や事業所との調整への影響が懸念される。
(2025年9月27日)
(2025年9月27日)
ニュース:米政府の移民政策に従わない州への災害支援制限に差止命令
トランプ政権は自らの移民政策に従わない州に対する災害時の財政支援を制限しようとする方針を打ち出したが、ロードアイランド連邦地裁は差し止めを命令した。同政権は発足直後の1月24日、国土安全保障省から災害支援金を受け取る州が移民当局と協力・連携する義務を規定した。それに反対する、民主党が与党の20州とコロンビア特別区(ワシントンD.C.)は、「移民政策が災害救助やテロ対策資金の供給に影響すべきではない」として、同省傘下のFEMA(連邦危機管理庁)を相手取って提訴した。同地裁のスミス判事は、トランプ政権の方針が州の国土安全保障や財政に損害を与える危険を指摘、原告の主張を認め、連邦政府によるこの条件の執行を恒久的に禁止する判決を下した。国土安全保障省は「法を破り、不法滞在犯罪者の逮捕を妨げている州や市は、資金を受け取るべきでない」と判決を批判している。
(2025年9月24日)
(2025年9月24日)
ニュース:FBIが偽のインターネット犯罪告発サイトについて警告
FBI(米連邦捜査局)はインターネット犯罪告発センターのウェブサイト「ic3.gov」を開設したが、これに偽装する詐欺サイトを複数確認したとの警告を発した。偽サイトは外見が本物に酷似しているだけでなく、ドメイン構造も模倣しているという。訪問者の個人情報を収集して金融詐欺などの目的で不正利用するおそれがある。FBIは、同センターが法執行機関以外の法律事務所や暗号資産企業と連携して資金を回収したり事件を調査したりすることも、同センターのほうから市民に接触することもないとして、注意を呼びかけている。
(2025年9月23日)
(2025年9月23日)
研究開発情報:金属製品を身に着けて靴を履いたまま通過する空港保安検査装置
2024年から米国の一部の空港の保安検査に、金属製品を身に着けて靴を履いたまま歩いて通過する人を検査できるシステムHEXWAVEが導入された。マサチューセッツ工科大学(MIT)リンカン研究所で開発された、マイクロ波画像とAI(人工知能)で金属・非金属の脅威物を探知できる技術を、リバティ・ディフェンス社が商用化したシステムである。米運輸保安局(TSA)は主要空港に対し2026年4月までに全職員の保安検査を徹底する義務を課しているので、HEXWAVEの導入が進んでいる。また、TSAは事前審査(TSA PreCheck)利用者専用レーンで使用するためにHEXWAVEを評価中である。空港以外ではエネルギー省ロスアラモス国立研究所、一部の連邦裁判所、テキサス州の矯正施設などにも配備されており、公共空間の安全を高める新技術として注目されている。
【関連リンク】
https://news.mit.edu/2025/walk-through-screening-system-enhances-airport-security-0710
(2025年10月16日)
【関連リンク】
https://news.mit.edu/2025/walk-through-screening-system-enhances-airport-security-0710
(2025年10月16日)
研究開発情報:グローバルサウスの建造環境は長期的な海面上昇に脆弱
気候変動により海面が上昇し、沿岸部の都市が浸水していくと予測されているが、その浸水の進み方は空間的・時間的に複雑である。海面上昇が2100年以降、アフリカ、東南アジア、中南米の沿岸部の建造環境にもたらす影響を概算した論文が、ネイチャー誌に掲載された。局地的海面上昇の関数として浸水測定基準を定義し、局地的海面上昇の複数の値について検討した。対象地域の建物8億4000万棟のうち、0.5メートルの上昇により約300万棟、5メートルの上昇により約4500万棟、20メートルの上昇により約1億3600万棟が浸水するおそれがある。本研究は浸水のリスクが土地によって大きく異なることと、化石燃料の排出を早急に抑制することが建造環境を守るために有益であることを示している。
【関連リンク】
https://doi.org/10.1038/s42949-025-00259-z
(2025年10月3日)
【関連リンク】
https://doi.org/10.1038/s42949-025-00259-z
(2025年10月3日)
研究開発情報:林野火災の煙への曝露が気候変動で増えることによる超過死亡
気候変動で林野火災が増え、煙のPM2.5(微小粒子状物質)の増加が2050年までに米国で毎年7万人の超過死亡をもたらすと推定した論文がネイチャー誌に掲載された。気候と林野火災によるPM2.5の関係の統計モデルと機械学習モデルを構築し、米国で記録されたすべての死亡のデータから、煙のPM2.5と死亡率の関係を実証的に推定した。大幅な温暖化のシナリオ(SSP3-7.0)のもとでは、2050年までに年間超過死亡数が7万1420人(95%信頼区間34,930-98,430)に達する。これは2011-20年の煙による超過死亡数よりより73%多い。林野火災の煙の健康影響は、米国における気候変動の影響のなかでもっとも重大で、もっとも損害額が大きいと結論している。
【関連リンク】
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09611-w
(2025年9月18日掲載)
【関連リンク】
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09611-w
(2025年9月18日掲載)
報告書など:全米アカデミーズ「疾病管理予防センター(CDC)におけるワクチンのリスク監視・評価」
米疾病管理予防センター(CDC)の予防接種安全室(ISO)は、一般に接種されているワクチンのリスクの調査研究を任務としており、新型コロナウイルス感染症パンデミックの期間中、ワクチンのリスク評価に中心的役割を担った。全米アカデミーズはCDCの要請を受けて、新型コロナワクチンに関連する潜在的な問題を探知・評価・報告するプロセスを含め、ワクチンのリスクをISOが監視・評価する統計学的・疫学的方法を評価する専門家委員会を招集した。また、委員会はCDCの対外コミュニケーション戦略も評価し、ISOのリスク監視・コミュニケーションのシステムを強化する方策を提言した。
【関連リンク】
https://doi.org/10.17226/29240
(2025年10月発行)
【関連リンク】
https://doi.org/10.17226/29240
(2025年10月発行)
報告書など:全米アカデミーズ「夜間歩行者の安全を高める戦略」
歩行は健康的で持続可能な交通システムの重要な要素であるが、現実には交通リスク・不快さ・不便さゆえに、多数の人にとって実用的な移動手段となっていない。複数車線、設計速度・規制速度の速さ、そしてバス停や店舗など歩行者が多い場所に安全で便利な歩道や横断設備がないことは、米国における歩行者死亡事故と一貫して関連している。こうした危険は夜間に顕著で、2018-22年の米国における歩行者死亡事故の76%が暗闇で起きている。全米アカデミーズ運輸研究委員会の全米協同道路研究プログラムの本報告書は、各州の運輸局が歩行者の安全を、とくに夜間に改善するための最新のリソースである。複数の方法による研究に基づいて、交通のプロが実施できる戦略を示す。
【関連リンク】
https://doi.org/10.17226/29224
(2025年10月発行)
【関連リンク】
https://doi.org/10.17226/29224
(2025年10月発行)
報告書など:全米アカデミーズ「ヒトのH5N1を検出するための診断ツール、隙間、協力体制」
米国の乳牛・ニワトリ・ヒトの鳥インフルエンザA(H5N1)感染が急拡大し、人・人感染のリスクが上がり、診断能力の強化が急務となっている。早期発見手段、臨床管理、公衆衛生の取り組みの調整について知識の隙間がある。全米アカデミーズは米国内の診断能力・インフラの強化について緊急に専門家に諮問し、報告書にまとめた。全米アカデミーズは、持続可能で分野横断的な即応能力を積極的に構築するプラットフォームとして「新興科学・工学・医療課題に対する即応イニシアティブ」を開始しており、本報告書はその初めての出版物である。
【関連リンク】
https://doi.org/10.17226/29273
(2025年10月発行)
【関連リンク】
https://doi.org/10.17226/29273
(2025年10月発行)
報告書など:GAO報告書「猛暑 FEMAの役割を再検討する必要が補助金削減により生じた」
猛暑は米国における天候による最大の死因であり、死者数は1999年から2023年までの間に2倍以上に増えた。FEMA(連邦危機管理庁)は2025年8月時点で、各州が猛暑対策に利用していた補助金事業の廃止するのか、それとも見直すのかを検討していた。FEMAはこの事業の改廃が自らの猛暑対応に及ぼす影響を評価していない。GAO(米議会の政府監査院)はFEMAに対し、州の猛暑対応を支援する自らの役割と能力を再評価することなど4つの措置を推奨する。
【関連リンク】
https://www.gao.gov/products/gao-25-107474
(2025年9月30日公表、63ページ)
【関連リンク】
https://www.gao.gov/products/gao-25-107474
(2025年9月30日公表、63ページ)
報告書など:GAO報告書「森林局 林野火災を担当する消防士の通信・追跡を改善するための次なる手段は不明」
林野火災の消火にあたる消防士は、安全に関わる情報を遠隔地・山地の現場から伝えるのが難しい場合が多い。米農務省森林局の消防士の通信は、主として無線の音声なので、火災の勢いや延焼速度などの情報を伝えにくいし、同局には徒歩の消防士の位置を追跡して地図上に表示する能力がほとんどない。森林局はこれらの能力の向上に取り組んできたが、職員が減ったので、今年7月から取り組みを延期・一時停止または縮小している。技術の進歩と高価格化や、技術と消防経験を兼ね備えた職員の不足も、能力向上の取り組みを妨げている。GAO(米議会の政府監査院)は、森林局長が内務省など他の消防組織と必要に応じて協力し、林野消防の通信・追跡・地図表示能力を向上するための包括的な戦略計画を策定することを農務長官に推奨する。
【関連リンク】
https://www.gao.gov/products/gao-25-107905
(2025年9月25日、20ページ)
【関連リンク】
https://www.gao.gov/products/gao-25-107905
(2025年9月25日、20ページ)


