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内外経済サロン




如何に静岡に新産業を形成していくか。産業界の各分野・金融界から参加いただき、意見交換しました。

第5回要旨

2014年1月20日開催
話題提供:日鉄住金総研株式会社 北井義久チーフエコノミスト
〇世界経済の今後については、「先進国は好調だが新興国は問題あり。」という見込である。
〇まず、米国経済は、企業収益が過去最高を更新しており、個人消費・設備投資が良い。 シェールガス・オイルの生産が拡大し、原油・天然ガスの世界一の生産国となる他、労働人口も増え、財政赤字、経常赤字とも解消に向かうので殆ど死角は無い。
〇EUも日本と同様、労働人口比率が低下に転じ成長率も中期的に1%くらいとなるが、南欧の債務危機が解消に向かっており、そこそこの成長は可能。但し欧州周辺では、経常赤字10%のトルコが問題。
〇中国は、労働人口比率が低下に向かう中で、潜在成長率は鈍化。住宅価格上昇、財政赤字拡大、大気汚染防止への巨額の投資が必要など、中期的課題は山積み。
〇アセアン主要国であるタイ、インドネシア経済が不調であり全体として芳しくない。
〇中国への経済依存が高い韓国、台湾も中国経済の影響を受け減速している。
〇特に韓国は2013年をピークに日本の1.5倍のスピードで労働人口比率の低下が進むため深刻。住宅バブル崩壊の危険性もあり、ウオン高もさらに進む。
〇日本では、アベノミクスの金融緩和・公共投資に加え、個人消費も上昇傾向にあるので好調である。原因は労働需給の改善でリストラの恐れが少なくなり消費に向かった事など。
〇流通サービスから建設・機械まで幅広く経済は拡大。東京のシティホテルは満杯、パート労働者不足から賃上げ、ゼネコンも東京オリンピックまでは好調を予測している。

ディスカッション
景気の現状認識

〇大手ゼネコンでは受注が手一杯で新規受注は断っており、今後、東京オリンピック関係の施設整備や東北復興需要の本格化などで需要は好調である。
〇流通業では即日配送体制を構築するため倉庫に設備投資し、それが納品メーカーにも波及し設備投資の連鎖を生んでいる。イオンが大規模店舗出店のため3000人のパートを時給900円で募集したが集まらないので1200円に上げ、それが周辺の賃金相場に波及。
〇労働需給が改善し、賃上げが起こり、個人消費につながれば自律的な経済循環となる。
〇株式が上昇しており、全国トータルで株式で10兆円以上の個人資産が増えたのでは。
〇静岡県では主要産業である電機、輸送機器産業で併せて1兆円の生産額減少があり、いまだに回復してない。景気・労働需給回復というが実感に乏しい。本当だろうか。
〇静岡県の主要産業である電機産業は、新興国との競合で競争力を失っているため、回復が難しいのではないか。今後も回復は見込めないので新産業に進出すべきである。
今後の産業
〇今後伸長が期待できる産業は、医薬品・医療機械や航空産業。航空産業は今後需要が確実に伸びるし、航空産業の中心が静岡県に隣接する愛知県なので地理的にも有利では。
〇医療機器関係では現在オリンパスの内視鏡以外は海外メーカーが圧倒的に強く輸入超過になっている。今後需要全体も拡大するので、この分野は有望な進出先である。
〇医療機器は、当初納入したメーカーが、メンテナンス・アフターサービスで稼ぎ、その間に次のモデルを開発し、数年後にまた売り上げを確保するというパターンである。
〇医療機器自体は海外メーカーブランドだが、中身の部品を見ると日本製だったりする。日本メーカーは医療機器では最終製品にまで到達できていない。その原因は医療責任等のリスクを取らないからではないだろうか。オリンパスは「体の中を見たい。」というある医師の要望に応え、20年の開発リスクをかけて内視境を開発し世界ブランドに育成。
〇地方では北陸が豊かである。女性が働き易い社会環境が原因かもしれない。静岡県でも北陸の豊かさの原因を研究したらどうか。
経済成長のリスク
〇消費税率アップによる腰折れ懸念については、賃上げにより乗り切れると予測される。
〇経済が良くなって来たので、真正インフレを避けるための出口戦略を考えるべき。
〇原子力発電を停止した影響で原油等の輸入が増え、日本の経常収支が赤字となっている。毎年巨額の経済損失の現実を踏まえ、結果はともかく原発稼働の是非を議論すべきでは。
〇建設業を始め技能労働者が不足しており、労働者の育成・確保が課題となる。

第4回要旨

2013年11月18日開催
話題提供:グローバル地域センター特任教授 柯隆 
最近の内外の経済動向
〇最近、(中国の当面の方向を決定する)共産党中央「三中全会」が開催されたが、改革については不徹底であり期待はずれであった。
〇自動車の排ガスに含まれるPM2.5の発生を抑制するため、自動車の台数制限をしようとしても、メーカーのロビー活動や北京ナンバー以外での登録などで制限できない状況。
〇環境対策を行うより罰金を払ったりワイロの方が安く済むという考えも一部にはある。
〇中国では「上に政策あれば、下に対策あり。」として経済活動が優先され、環境規制などの政府の公的政策が中々浸透しない。
〇マクロ経済では、第一の人口ボーナスとしての若年人口が減少する一方で、教育レベルの向上・熟練工の増加によるいわば「第二次人口ボーナス」があるので中国の経済成長は2020年までは続くと予想。
〇一方で経済成長の陰で、所得格差や環境問題等の社会問題が顕在化してきており、これを解決するには「司法の独立」などの改革が不可欠ではないか。

 
ディスカッション
〇中国では、共産党幹部、国有企業幹部、民間企業幹部、都市戸籍、農村戸籍と分けられるが、上位3階層に富が集中しすぎている。
〇中国では組織で働いていても、独立自営業者という感覚を持っており、手数料(ワイロ)をもらうのは当然という意識である。
〇過去には、儒教が倫理的規範であったが、現在では、拝金主義を抑える倫理的な柱がなくなっているのではないか。
〇労働分配率が、米国70%、日本60%、中国39%であり、中国は低すぎる。また、相続税がなかったり、所得税の累進課税が機能せず所得再配分に効果を上げていない面もある。
〇中国の貿易相手国は一番が米国、二番が欧州。労働集約型の安い「メードインチャイナ」に関しては欧米のリセッションによる影響を受けにくい。
〇尖閣問題で日本ブランドの売り上げが落ちたが、一年たった現在は回復している。
〇中国からの訪日観光客も伸びており、中国人観光客は「メードインジャパン」の製品をブランドとして買い求めている。
〇以前は農村部から沿海部へ安価な労働力が供給されたが、近年は毎年10%ずつ賃金が上昇しており、中国の労働集約型産業の力を押し下げている。
〇日本メーカーは静岡の企業を含め多数中国に進出しているが、今後の進出に際してのリスクはどう考えるべきか。
〇中国進出日本企業における最大のリスクは、日本側自身にある。25,000企業のうち、1/3の8,000社が赤字であるが、過去の経緯やしがらみで閉鎖できずにいるのでは。
〇今治のタオルは自身のブランドを確立したので立ち直ったが、福井のメガネは特殊な金属の加工を中国から下請しているが、独自ブランドではないので利益が出にくい。
〇日本企業が中国で勝ち抜くには「ブランド力の確立」が不可欠である。

第3回要旨

2013年9月30日開催
話題提供:一般財団法人静岡経済研究所 中嶋壽志専務理事
静岡県の景気回復の遅れと製造業における構造変化
〇日本経済は、円安によって製造業の輸出採算が好転。個人消費は百貨店を中心に堅調、住宅も消費税増税駆込み需要があり好調。景気回復傾向。
〇静岡県経済も回復傾向。しかし全国に比べ緩慢。輸出採算は改善したが、輸出は増えていない。
・新車販売台数は前年割れ。住宅販売と百貨店販売は堅調。
・雇用は振るわず。有効求人倍率は24年7月以降、全国平均を下回り、差が拡大傾向。特に西部地域が悪い。
・製造品出荷額等(23年)は前年に比べ1兆円減。全国の減少分の25%に当たる。
・1兆円減のうち、電気機械と輸送機械でそれぞれ6300億円減と4600億円減。
‐電気機械産業では、IT関連製品において、モジュール型で超大量生産を実現した新興国のEMS企業が台頭し、競争力を失った。
‐輸送機械産業では、工場が海外に移転したうえ、国内の生産基地が九州・東北に移動した。

ディスカッション
(1)日本・静岡の経済・産業の現況
〇日本の製造業企業は、海外では伸びているが、国内では活動が低下している。
〇本県で住宅投資が堅調な要因は、地震対策の消費税増税駆込み需要にあるのではないか。
〇市場が急拡大するタイ・インドネシアへの県内部品企業等の生産機能移転、県内から東北への自動車関連企業の生産機能移転、清水港からの輸出減等、中島氏の発表を裏付ける事象が県内で見られている。
〇有効求人倍率は、東海4県でも本県のみ低い。
〇中国の工場で自動化が進んでいるため、ロボットやFactory Automation関連企業は盛況。
〇企業は国内需要は先細りと予想しており、アベノミクスで設備投資を減税しても、国内での投資は進まない。市場が拡大を続ける海外への投資に向くだろう。
〇日本の大学では英語教育に力を入れつつあるが、企業の現地子会社では現地語で指導できる人材が不足している。留学生に本県企業に就職してもらい、活躍してもらうべき

(2) 静岡における新産業の方向
〇自動車の高級基幹部品を生産する企業は、世界の完成車メーカーを顧客として伸びるであろう。しかし、製造業の中心は、医療機械等の新産業に移行するだろう。
〇付加価値が高い産業に資源を集中すべき。アベノミクスの設備投資減税は、投資すべき分野が見えていないので、効果が疑われる。
〇介護、医療産業では雇用が増える。
・医療付老人ホームの設置基準を緩和すれば、ビジネスとして成り立つ。料金を年金で賄える程度にする、医師・看護師を集めるため給与を高く設定する、既存施設を活用する等の策も考えられる。
・高齢者施設向けの食事供給等、高齢者向け産業は1つの活路。
・介護現場は3K。また公的補助があって初めて成り立つ産業であり、介護保険は先細り。ビジネス環境が良くなく、人が集まりにくい。
・がんセンターを特区にして外国語ができるスタッフを揃え、海外富裕層を受け入れたらどうか。また混合医療を実施すれば、技術進歩が早まる。
・医療機器では、医師が、学生時代から使い慣れた欧米メーカーの機器を使う傾向にあり、日本メーカーは苦戦している。また、ODAを活用し、海外に、教育ソフト・メンテナンスと一体にして提供してはどうか。
・薬品は、機械も含め規模が大きい。さらに成長するのではないか。
〇東南アジアにおける企業収益を県内に還流させるビジネスモデルを構築できれば、第3次産業等で生きていける。
〇香港は、製造業を広東省に移し、製造業関連産業(物流、デザイン)等で成長した。
〇観光業では、滞在し消費する観光客を増やすべき。歴史文化によって海外富裕層を惹きつけようとする金沢のように、ポジショニングを明確にすべき。
・呉服町や七間町が夜10時頃まで営業する、駿府城公園の内堀を自動車乗り入れ禁止にする等、観光客にとり魅力ある街づくりを進める必要もある。
・農業では、高付加価値の温室栽培作物が原油値上がりの影響を受けている。エネルギーが課題。
・清水港のコンテナ輸出は以前の水準には戻らない。しかし国内大消費地の中心に位置する優位性を活かし、輸入とそれに絡めた全国配送を行う配送センターとして生きる道がある。雇用も生まれる。中部横断自動車道ができればさらに発展の可能性がある。

第2回要旨

2013年7月22日開催
話題提供:グローバル地域センター長 竹内宏
最近の内外の経済動向

○09年を底として、日本の経済指標は好転しつつあり、アベノミクスはこの上昇基調を確実にした。
○アメリカでは、バーナンキ議長が、5月に金融超緩和の変更の可能性を述べると同時に、新興国通貨が暴落し、出口戦略を伸ばした。タイミングが難しい。
○中国でもノンバンクの不良債権化が懸念されているが、貸付け債権が証券化されていないので、サブプライムローン問題のような深刻な事態にはならない。
○日本では消費税引き上げは、景気情勢を見て決める。多分、予定通り3%アップになるだろう。
○第三の矢の「成長戦略」ポイントである。農業、教育、医療、労働力に移動等の改革が不可欠。
○アメリカは、日本と、中国・韓国との対立が激化することを嫌っている。閣僚の靖国神社参拝も中止し、尖閣問題は棚上げに向かう。

ディスカッション
○円安により名古屋地域は上向きだが、静岡県は出遅れている。名古屋と新興国向けが多い静岡県の違いか。
○中国経済は減速していると言っても7%成長であり、人口が若く、政府の意思決定が速い。米国は出口戦略が大変だが、日本はもっと大変ではないか。
○トヨタはハイブリッド車も値下げ販売しようとしているが、ドイツメーカーは値下げしない。中国では、ドイツ、ヨーロッパのブランドイメージが良い。
○県信用保証協会では、県内中小企業への融資で代位弁済の率が上昇している。原因はリスクの高い起業・新事業進出等の企業に融資していることにある。
○中小企業では、親企業に追従して海外進出できる企業とできない企業に二分され、収益格差が生じている。
○統計で、「廃業の方が開業の3倍」といわれるが、日本で廃業し海外で開業する場合もあり、国内だけの開廃業率を見ても企業の傾向は分からない。
○金型産業など、海外から日本に回帰している企業も出ている。本県の特色を活かし、「健康長寿」や「食」をテーマに成長産業を創れるのではないか。
○医療分野が成長産業と言われるが、医療機器の市場規模はそれほど大きくない。日本は検査機器は得意だが、訴訟リスクのある治療器具が育っていない。
○韓国、タイ、インドでは、医療観光が盛んである。日本でも広く検討すべきだ。
○介護は、公的資金を入れて初めて成り立つ産業である。また、手間をかけずに健康にするよりも医療介護の手間をかけた方が儲かる仕組みであり、合理化効率化により利益を上げるという企業の競争原理が通用しない。
○介護サービスを受ける人が高齢者であるから、健常者のようにサービスの良否を表現できないことも競争を阻んでいる。ロボット導入等で効率化の余地はある。
○経済の基盤として、安定電力の確保も課題。本県は富士川を境に50Hzと60Hzに分かれている上、浜岡原発もある。自然エネルギー開発には限界があり、基幹電力として火力、原子力を利用せざるを得ない。
○日本の電力技術は優れており、海外からコンサルティングの需要はあるがアフリカなどの電力供給施設は中国が独占している。
○静岡県は、食材が豊富なので「食」をテーマに成長産業ができないか。
○静岡駅も駅周辺も特徴がない。駅に降り立ったらお茶の香りがするぐらいの工夫が必要。

第1回要旨

2013年5月20日開催
話題提供:静岡県立大学 本田悦郎教授
アベノミクスについて

○日本の経済低迷の原因は15年程度続いているデフレであり、「デフレは続くであろう。」という強固なデフレマインドを融かすために、「異次元の無制限の金融緩和」という政策を行った。
○日銀も、大部分の経済学者も「人為的な金融政策で現在の縮小する経済の実態を変えることはできない。」という見方であったが、需要不足経済に落ち込んでいただけであり、日本には潜在的な成長力がある。金融緩和をした後、その資金を適切な投資や消費に導くことができれば、適度なインフレの下、経済成長も可能であると考えている。
○アベノミクスの効果は、まず、金融市場や株式で先に効果が表れ、実体経済に波及するのは2年くらいかかる。
○実際、国内には保育や介護など需要に供給が応じきれない分野もある。このような分野を規制緩和することで持続的な成長が期待できる。
  

ディスカッション
○本県は「ものづくり県」であるが、近年、製造業の落ち込みが大きい。アベノミクスを機に転換を図る必要がある。(経済研究機関)
○日本は高齢化しており、金融緩和により有効需要が伸びる余地があるのか疑問である。成長が著しいアジアの需要をとりこむことが必要では。(エネルギー関連企業)
○所得さえ伸びれば欲しいものはいくらでもあるはず。日本には潜在的な需要は十分あり、2%の成長と2%の物価上昇は可能。(大学研究者)
○県内製造業にとって為替レートは1ドル100~110円程度で安定するのが望ましい。(製造業)
○1ドル100~110円程度数年たてば海外から国内に回帰する製造業もあるのでは。(大学研究者)
○清水地域の産業は食品が多い。原材料の輸入価格が円安で上昇しても価格転嫁しにくいので大変である。(経済研究機関)
○医療は需要の伸びが多く見込める産業だが、介護福祉は低い人件費で利益率も低く零細なところが多い。共同化で規模を拡大し、女性や契約社員を正社員化し能力を発揮してもらうことが必要。(医療福祉団体)
○中小企業と大学の敷居を低くし、起業する中小企業に資金が提供されるよう支援の仕方を代えるべき。(ベンチャー企業)
○補助金で誘導するよりも民間の競争に任せて、減税で支援するのが良い。 
○LCC等格安商品が売れる一方、高級旅館やクルーズもはやっている。航空業等新分野での成長には多様な需要を見極める必要がある。(運輸業)
○一企業として、光技術を起業に活かすための大学院を創設し、今まで10数社のベンチャーを育てた。「儲け」ではなく「夢」を育てている。(製造業)