グローバルナビゲーションへ

本文へ

フッターへ



サイトマップ

検索

HOME >  中国展望 (特任教授 柯隆) >  2013年(海外ジャーナリズムの眼) >  中国で「いじめ」に―アップル社

中国で「いじめ」に―アップル社




4月19日
さる3月15日は世界消費者権利保護の日だった。中国の中央テレビ(CCTV)は毎年この日に、消費者の権利を損なう企業の名前を公表し責任を追及する特別番組「CCTV3・15晩会」を放送する。今年は、中国市場で販売が絶好調のアップル社が大きく取り上げられた。同番組では、アップルは中国ユーザーに対し、故障したアイフォン4シリーズ製品を、他国のように新品に交換できないなどの問題が取り上げられ、同社のアフターサービスがダブルスタンダードであるとして問題視された。これについて、アップル社が3月23日にインターネットの公式サイトでダブルスタンダートを否定し、取材なども拒否した。これに対し、CCTVは関連ニュースを報道し続け、『人民日報』や『光明日報』などの政府系新聞には連日アップル社を批判する記事が掲載された。4月1日、アップルのCEOティム・クック氏が、ネットで中国ユーザー向けにアフターサービスの改善案を公表し、「誤解があったことを心よりお詫びする」と謝罪した。

アップル社批判をめぐるマスコミの動きをみると、まず、CCTVでは、連日夜7時のゴールドタイムのニュース番組「新聞聯播」と高い視聴率の時事評論番組「焦点訪談」で調査報道を続けていた。そのうえ、3月25日から連続5日間、『人民日報』はアップル社批判の記事と評論を連載した。3月25日には、「アップルは『神様』に噛みついた」とのタイトルの記事が一面に掲載され、「アップル(りんご)はなぜ噛みにくいのか」、「傲慢なアップル(りんご)は噛めない」と題した記事と合わせて三つの記事が掲載された。続いて、「威張るアップルは何を傷つけた」(3月26日)、「アップルの比類なき傲慢さを打破せよ」(3月27日)、「アップルはどのぐらい脱税したか」(3月28日)、「修理規約を変えたものの実際の変更はない」(3月29日)とのタイトルで掲載され、どの記事も厳しい批判の内容ばかりだった。さらに、『光明日報』は、「アップル、なぜこんなに“高慢と偏見”か」(3月16日)、「傲慢なアップルに代価を払わせよう」(4月1日)、「公平な待遇は謝りよりはるかに重要」(4月3日)とのタイトルの記事が掲載された。ほかの主要メディアもこの時期に一斉に論調を発表しアップルを批判した。

米国メディアの反応に対し、人民網は4月1日、「アップルが中国に謝罪したのはプレッシャーによるもので、ただのPR活動だと米メディアが報道」とのタイトルの記事が掲載された。「中国メディアの報道はナショナリズム、ローカルブランドの保護策だ(AP通信)」や「米国の国家安全保障上の脅威と見なされた中国の「華為」社と「中興」社が米国で排除されたことと関連づける (ニューヨーク・タイムズ)」との米国メディアの反発に対し、「アップルに欠陥がないなら、なぜ告発されたか。メディアの報道だけでローカルブランドを保護できるか。米国メディアの陰謀論は理解できない」との反論が掲載された。なお、「アップルの謝罪は、アップルにとっての中国市場の重要性を表した(ロイター)」が引用され、謝罪の理由が推測された。

ただし、マスコミの論調と反対に、アップルファン達は「アップル」を依然として支持する態度をネットで多数示した。


(柯隆 編集)