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HOME >  中国展望 (特任教授 柯隆) >  2013年(海外ジャーナリズムの眼) >  中国とスイスとのFTA締結の意義

中国とスイスとのFTA締結の意義


中国とヨーロッパ諸国の間で初めてのFTAとなる、中国・スイスのFTA交渉が纏まった。中国とEUの間では、このところ度々貿易摩擦が発生している。スイスは、非EU加盟国ながら、EU各国と自由貿易を行っており、中国とEU間の貿易の橋渡し役になることも期待されている。

6月21日

中国とスイスとのFTA(自由貿易協定)交渉は、2011年4月以降9回行なわれ、最終的に2013年5月24日に締結合意に至った。李克強首相が同日に訪問先のスイスで演説し、正式に発表した。協定には、製品やサービスの貿易のみならず、環境保護、労働者の就業、知的財産権、市場競争などの新しい内容も含まれる。両国は互いに対しほとんどの製品についてゼロ関税または低関税を適用すると共に、サービス貿易の自由化と円滑化を進めることで合意した。

『人民日報』は5月25日に、李克強首相がスイスで行った「中国とスイスが手を携えて実務的な協力のもとで新しい未来に進む」との講演内容を掲載した。「FTAの意義は両国に限らない。中国とヨーロッパの国や地域との間では初めてのFTAであり、中国と世界の経済力トップ20の国との間で初めてのFTAでもある。これは両国の国際貿易協力にとって非常に有益であり、優位性を持つ両国の製品が相手国の市場に容易に進出することができ、両国の企業と消費者にとって望ましいことである。また、FTA締結は、中国とヨーロッパとの協力関係強化にとっても非常に有益である。スイスはEU各国と密接な経済関係を築いており、中国企業とヨーロッパ企業との関係深化のための重要なステップになると期待されている。そのうえ、世界各国にとっても重要な役割を果たすものである」と述べた。さらには、米国が積極的に進めているTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)とTTIP(環大西洋貿易投資連携協定)について、「TPPとTTIPは国際貿易構図と貿易投資自由化に重要な影響を与えることになる。中国は貿易投資自由化及び地域経済融合に役立つ如何なる協力に対しても、原則的にオープンな姿勢を取っている。中国は多角的貿易体制と地域貿易の“両輪”を同時に進め、貿易と投資における如何なる保護主義にも反対する」との講演内容を伝えた。

『南方週末』は、5月31日付けの紙面で、「スイス:中国とEUとの間の“香港“」と題した記事を掲載した。「中国とスイスとのFTA締結は、ちょうどEUが中国製の太陽光発電製品と無線通信設備に対しアンチダンピング調査を起している頃であった。このような貿易摩擦が近年度々発生している。スイスがEUに加盟していないため、両国のFTA協定は、スイスという独特な“橋渡し役”によって、中国とEUとの国際貿易関係を緩和する狙いだという一部の識者の見解もある。一方、スイスが香港のような貿易機能を果たすため、EUでは、スイスは中国製品がEUに入る“門戸“になるのではないかと懸念されている」と伝えた。また、同紙は「大国にとって、FTA締結は、経済問題より戦略的な意向が強く働くという面がある」との対外経済貿易大学副校長趙忠秀氏の言葉を引用し、Anbound(中国の民営コンサルティング企業)のレポートでの「近年、中国はアジア各国と多角的貿易体制を積極的に推進してきた。例えば、アセアン10+1、アセアン10+3など。多くの国は中国のアジア経済貿易協力体制における主導的な役割を危惧している」という提起についても言及した。「この危惧は、世界各国に、貿易エリアを巡る陣取り合戦を引き起こした。TPPとTTIPが新しい時代のハイレベルFTAと呼ばれる中、より積極的にFTAの締結を進めると同時に、新しいゲームルールに適応し、またそのルール作りに携わる必要がある」と述べた。

(柯隆 編集)