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HOME >  中国展望 (特任教授 柯隆) >  2013年(海外ジャーナリズムの眼) >  英製薬大手GSK社が中国で贈賄事件

英製薬大手GSK社が中国で贈賄事件


薬品の売上増を図るための賄賂コストが、薬品価格を押し上げていた。各紙が、政府による賄賂取締り強化の背景や、賄賂発生の要因等について論じた。

10月4日

さる7月11日、イギリスの製薬大手企業グラクソ・スミスクライン社(以下GSK社と略称)の中国法人が、贈賄事件に関与した疑いで取り調べを受けているというニュースが各紙で大きく取り上げられた。GSK社の中国法人の売上と利益を高めるため、2007年から旅行代理店とコンサルティング会社を介し、病院の医者や政府関係者などに総額5億ドル相当の賄賂を贈った容疑で、4人の中国人幹部が逮捕された。それに対し、同社は7月15日に「中国政府の汚職根絶を支持する」と発表した。また、7月22日に同社はロンドンでコメントを発表し、中国法人の一部の管理職が贈賄事件に関わっていたことを認めた。一方、GSK社のみならず、イギリスのアストラゼネカ社、ベルギーのUCB社など他の外資製薬企業の中国法人を対象とした賄賂捜査も開始された。

「GSK社の管理職の話によると、宣伝やバックマージンのコストが同社の薬品価格の2割から3割を占める。実はこの比率は高くないといわれ、高い場合には5割まで達すると医薬業界の関係者が語った。こうした見えないルールの影響で、多くの製薬企業が薬品の末端価格をつり上げた。外資製薬企業の研究開発力はローカル企業より優れており、新薬に対する市場ニーズが高いため、価格が高くても市場合理性がある。しかし、GSK社の贈賄問題から、この高い価格の中に違法なコストが含まれていることが分かった。ローカル製薬企業の研究開発力が年々高まり、開発された新薬には外資企業の新薬に相当するものが増えている。また、医薬業界全体の改革により、難関とも言える公立病院の改革も進められ、賄賂の取り締まりをテコ入れするタイミングでもあった。発展改革委員会の関係者の話によると、外資企業に対し、海外市場における同様の薬品との価格比較を行い中国での販売価格を設定するよう指導する。コスト調査及び価格比較の実施により、近い将来に政策に変わる可能性もある。」(人民日報)

「賄賂は、中国の製薬業界では公然の秘密である。次にどの企業が摘発されてもおかしくない。外資企業は、厳しい財務上の都合により、セミナー開催などを通じて贈賄するケースが多い。今回の外資製薬企業の贈賄問題は、医薬業界に大きな波紋を呼んだ。多くの製薬企業が医者を招聘するセミナー活動を中止し、医者の対外活動を控える病院も増えた。」(毎日経済新聞)

「GSK社などの企業がなぜ公立病院に出入りしているのか?民営や外資の医療機関には賄賂がなぜあまり生じないのか?医療システムに大きな問題があるのではないか?改革開放前、中国の病院の経営は基本的に政府の予算に頼っていた。市場改革に伴い、多くの病院が自力で運営することになったため、薬品は病院にとって大きな収益源になった。こうして、「医薬不分(診療と薬品販売が分離していない)」、「以薬養医(薬品を以って病院を養う)」によって、賄賂の土壌が広まった。政府が賄賂を取り締まると同時に、医薬流通システムの見直しも行うべきだろう。企業は、販売価格から見えないコストを絞り出し、競争力を高めるため研究開発に使用するのが正しい選択であろう。」(財訊)

(柯隆 編集)