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オスプレイを「固定翼機」として眺めると…(特任教授 小川和久)




9月7日 特任教授 小川和久(特定非営利活動法人・国際変動研究所理事長)
米国が垂直離着陸輸送機オスプレイを日本に配備して4年。いまだ日本国民のオスプレイ恐怖症は払拭されていない。

回転翼機と固定翼機双方の特徴を備えたオスプレイは、航空関係者の世界では「夢の飛行機」と高く評価されてきた。しかし、試作段階2回、初期生産段階2回の墜落事故で死者30人を出し、「未亡人製造機」という悪評が広まることとなった。

開発段階の事故は、件数より1回あたりの死者数で危険視された。乗員4人と兵員24〜32人が搭乗する輸送機である。旅客機と同様、墜落事故が起きれば多数の死者が出ることは避けられなかった。これが戦闘機なら乗員が1〜2人と少なく、射出座席で脱出が可能だから、4回の墜落事故が起きても死者はゼロだった可能性すらある。

しかし、2006年の量産開始から10年間の重大事故は4回、死者7人と、ほかの航空機と比べても事故率は低い。10万飛行時間あたりのオスプレイの事故率は1.93%と海兵隊の全航空機の2.45%を下回っているし、フィリピン航空2.47%、大韓航空2.58%など民間航空機よりはるかに低率だ。

それにもかかわらず、マスコミ報道の刷り込みもあって、多くの日本国民がオスプレイを危険視する傾向にある。

オスプレイについて日本国民が理解すべきは、まず、日本と比べて納税者意識の高い米国で危険性を解決していない航空機が実戦配備されることはないという点、そして、実戦配備から10年間の事故の圧倒的な少なさという点だろう。

さらに、反対派が挙げてきた「オートローテーション機能」(エンジン停止の際、下からの風圧で回転翼を回して着陸する機能)の有無についての整理も必要となる。

オートローテーション機能については、オスプレイを回転翼機の範疇に含めてみるか、それとも固定翼機の範疇でみるかということで、まったく違う姿が見えてくる。

固定翼機として眺めると、オスプレイは「世界で最も安全な固定翼機」と言ってよいほどの安全性を備えている。

中型ヘリや小型ヘリのふわっと着陸できるオートローテーション機能こそないが、オスプレイのオートローテーション機能は「ハードランディング」を可能とするものだ。

日本ではオスプレイ反対派を含めてオートローテーションについての誤解があるようだが、ヘリコプターでもCH47チヌークなどの大型ヘリは、ハードランディングするのがやっとで、ふわっと着陸することはできない。機体も壊れるし、場合によっては死傷者も出る。

しかし、大多数が助かることがハードランディングの目的であり、日本以外の先進国の常識となっている。2015年5月18日のハワイでの事故も、クラッシュ(墜落)ではなく、ハードランディングに成功し、死者は1人、21人が助かっている。

このような世界で最も安全な固定翼機オスプレイを活用できるようになるのか、これから日本国民の思慮が問われることになる。