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Jアラート訓練の致命的欠陥(特任教授 小川和久)




10月13日 特任教授 小川和久(特定非営利活動法人・国際変動研究所理事長)
北朝鮮の弾道ミサイル発射について、Jアラート(全国瞬時警報システム)による警報が出された。発射されたのは中距離弾道ミサイル「火星12」で、8月29日と9月15日、北海道襟裳岬の上の宇宙空間を通過して太平洋に着弾した。1回目は2700キロ、2回目は3700キロの飛翔距離だった。

この弾道ミサイル発射について、地震、津波など大災害時と同様に国民に注意を喚起し、必要なら避難を呼びかけることは間違ってはいない。

問題は、施設整備が行われず、それに伴う訓練も実施されていないことだ。

施設整備については、弾道ミサイル攻撃の標的になりやすい優先順位、具体的には東京、大阪、福岡の中心部について、全てのビルの地下部分をシェルターとして使えるように義務づけ、標識を設置する。むろん、地下街と地下鉄の駅、通路についても逃げ込みやすいように入り口を拡げるなど、通行人が直ちに避難できるようにする。この三都市の中心部に近い地域の学校など公共施設も、ミサイルの通常弾頭が爆発したときの爆風と破片の被害を軽減できるように強化するのである。

堅固な建物が少ない地方都市や耕作地などについては、イスラエルなどが実行している簡易型の公共シェルターを必要に応じて設置するほか、田畑や原野についても高さ3メートルほどの強化コンクリートの壁や排水路用のコンクリート製暗渠(あんきょ)を設け、その陰に隠れて爆風と破片を防ぐようにしておくのである。

訓練は、発射4分後にJアラートが発令されるとして、上記のような避難施設に着弾までの3〜4分の間に逃げ込めるように訓練を繰り返す必要がある。この訓練は、津波や洪水の被害が想定される地域にとっては、ミサイル以上の重要な意味を持っている。

静岡県内でも、巨大地震発生から5分以内に避難場所にたどり着かなければ生き残れない地域もある。ミサイルに対する訓練でJアラートが鳴らされた場合にも、自分たちが直面する危機である津波や洪水を意識して真剣に取り組み、避難計画が適切であるかといった検証も含めて、自らの安全を高めていくのが望ましい在り方だろう。

それにしても、行われている弾道ミサイルへの対処訓練は、無責任を絵に描いたような姿である。

なぜかといえば、北朝鮮が発射した弾道ミサイルは赤道上空36000キロにある米国の早期警戒衛星によって探知され、発射直後のブースト段階が終わって目標に向けて軌道を修正した段階で着弾地域、着弾時間などが割り出され、日本の首相官邸にも米国政府経由でリアルタイムの情報が伝えられる。これはJアラートが発令される発射4分後よりかなり早い段階だ。この情報をキャッチした段階でJアラートの発令の可否、発令が必要な地域を決めることができるはずだ。

それを、北海道上空を通過していくことがわかった段階で長野県までJアラートを発令するというのは、なにかの事故でミサイルが迷走して長野県まで飛んだときにも責任を問われないようにしているとしか思えない醜態だ。

奈良県天川村では、弾道ミサイルに対して短時間での対応に限界があり、かえって混乱を招く現状を踏まえ、情報を伝達しない対応をとっているが、こうした自治体の自主的な判断の実態を把握し、政府は弾道ミサイル対処の方針を早急に見直すことを求められている。