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北朝鮮核・ミサイル問題は「時間切れ」が近いのか(特任助教 西恭之)



1月4日 特任助教 西恭之
米トランプ政権内では、北朝鮮核・ミサイル開発問題の「時間切れ」が迫っているという声が大きくなっている。その前提には、北朝鮮は米国を核で威嚇して在韓米軍を撤退させ、朝鮮半島を統一することを狙っており、北朝鮮が米国を核攻撃する能力を手にすると、北朝鮮の威嚇的な行動を抑止することは難しくなるという見方がある。

米国家安全保障会議(NSC)のマクマスター大統領補佐官は2017年11月3日、トランプ大統領は外交的解決の時間切れが迫っているとアジア各国首脳に訴え、北朝鮮に対するさらなる圧力と説得を要請して、「2-3か月は結果を辛抱強く待つ」ことになると述べた。

大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」の試射を受けて、マクマスター氏は12月3日、戦争の可能性は「毎日高まっており、この問題の解決は一刻を争う」と主張した。マクマスター氏は12月12日にも「時間がなくなりつつある」として、対北朝鮮制裁の強化を中国に求めた。

一連の「時間切れ」発言は、米国内でも、オバマ前政権当局者や軍備管理専門家が次のように批判している。

  1. 米軍が北朝鮮を攻撃しても、韓国や日本に対する北朝鮮の反撃を封じることはできないのだから、こけおどしでしかない。
  2. 北朝鮮が真に受けた場合、米軍の示威行動を攻撃の着手と誤認して開戦する危険が高まる。
  3. 北朝鮮が核・ミサイル実験を続けた場合、米国の体面を保つために北朝鮮を攻撃せよとの圧力が生じる。
  4. 北朝鮮がICBM
を配備しても米国の核報復能力は変わらないので、何のための「時間がなくなる」のか不明。

この批判は、北朝鮮は米軍の進攻を抑止するために核兵器を開発しているという、米国で多数を占めてきた見方に基づいている。

しかし、北朝鮮は数十年前から通常戦力で米軍の進攻を抑止できているので、この目的だけでは核開発を説明できないと、NSCのポッティンジャー・アジア担当上級部長は指摘している。北朝鮮にとって核兵器は在韓米軍撤退、米韓同盟解消、朝鮮半島の統一といった目的のために米韓を脅迫する手段だというのだ。マクマスター氏によると、この意図をもつ北朝鮮を抑止することは、冷戦中のソ連に対する抑止よりも難しいという。

この見方は、北朝鮮の国内宣伝の専門家であるブライアン・マイヤーズ博士(釜山・東西大学校準教授)の分析を根拠としている。

マイヤーズ氏によると、北朝鮮は人種的ナショナリズムに基づいて北朝鮮主導の統一を根気強く追求しており、韓国社会の北朝鮮に対する敵意の低下に励まされている。北朝鮮のイデオロギーでは、米軍さえ南から撤退すれば統一は不可避となるのであり、核保有の目的は、米国を威嚇して在韓米軍の平和的撤退を強制することだという。

そうした威嚇を抑止するためには、弾道ミサイル防衛を含む米韓ひいては日米韓の連携を強める必要があるのだが、韓国は10月31日、この連携を強めない立場を中国との協議で表明した。北朝鮮の威嚇に対する抑止が「時間切れ」になりうるというマクマスター氏らの発言には、一定の根拠があるのだ。