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希望の創出こそ震災復興の原動力だ(特任教授 小川和久)


4月13日 特任教授 小川和久(特定非営利活動法人・国際変動研究所理事長)
さきごろ、テレビのニュースが被災2年を迎える熊本地震の復興状況について特集を放送していた。

そこで課題として浮き彫りになったのは「みなし仮設住宅」の問題だった。民間のアパートなどを仮設住宅として提供しているものだが、そこに暮らす避難者の多くが高齢者で、医療費の打ち切りなど厳しい現実に直面しているという。

平均的に見て、被災後の生活再建に5年かかるとして、例えば被災時に65歳だった定年世代が70歳までに家を再建することはできないだろう。

人は希望を見出してこそ、生きる意欲を持つことができる。熊本では、みなし仮設住宅での避難者の孤独死も深刻な問題となっていると報じられた。

そして、ニュースを見ているうちに、2011年3月11日の東日本大震災発生の直後、首相官邸や与野党などに提案して歩いた『オペレーション希望』のことが思い出されてならなかった。

この『オペレーション希望』は、大人たちが「希望」を抱いていないと、復興に向けて歩もうにも元気が出ないし、大人が前向きに生きていなければ、子どもたちが明るく育つわけがない―という考えのもと、単なる復旧・復興にとどまらず、子供たちの未来を切り開くための取り組みでもある。

巨大地震の惨禍から再生した日本を、より素晴らしい国にしていくのは子どもたちだ。厳しい復興途上の生活であろうとも、大人たちが安定した精神状態を保ち、笑顔でいなければ、子どもたちも不安になる。それが良い結果につながるわけはない。『オペレーション希望』は、単なる復興計画を超えた展望のもと、まずは大人が「希望」を失わないようにする5カ年計画として立案され、5年間にわたって貧しくとも普通の生活をしてもらえるようにしようというものだ。希望を失わないために必要なことは、再起に向けた確かな手がかり、足がかりである。

具体的には、対象は自宅や事業所を失った被災者のすべてとし、5年間にわたって生活費を支給する。最低限度の生活を目標にしているという生活保護の水準を参考に、例えば18歳以上が月額12万円、18歳未満5万円ほどになるだろうか。大人ばかり4人家族なら月額48万円になる。大人2人と子供2人なら月額34万円。これなら、住居が無料や低家賃であれば、生活するだけでなく再起のための活動も少しはできるようになるだろう。

そして、仮設住宅より広い間取りの大型集合住宅を短期間で建設し、被災地の住民には集団移転をしてもらう。その居住地は再起していくための仕事の場所の近くとし、家賃と水光熱費のほか、医療、教育、福祉関係については原則5年間無料とするのである。

生活の再建に関しては、例えば農業従事者には集団農場を整備し、再出発の基盤を作ってもらう。漁業なら、再建された港へ高台に建設された集合住宅から通えるように配慮する。商業の分野であれば、集団農場、漁港、集合住宅などに隣接する商業団地で活動を開始する。会社がなくなってしまった勤労者については、上記のような形で基盤再建をスタートさせた農業、漁業、商業などの分野に職場を開拓し、そこに就職を斡旋するというものだ。

支給金額などは、被害の規模により圧縮されるものとするが、明日は我が身、被災していない国民の多くも賛成するはずだ。被災者が希望を失うことは、日本全体の衰亡を意味する。静岡県としても、ぜひ、このような構想を打ち出してほしい。