激動期のグローバル戦略作りとシンクタンクの重要性 (特任教授 柯隆)
静岡県立大学グローバル地域センター
特任教授 柯隆
特任教授 柯隆
毎回のことだが、ワシントンに出張して、日本に帰ってくると、一番感じる日米格差といえば、日本に本物のシンクタンクができていないことである。そもそもシンクタンクとは羅針盤のような役割を果たす組織・団体である。国を海に出る舟のようなものに喩えれば、羅針盤を装着していない舟が海に出ると、どんな結末になるかは簡単に想像できる。荒波に遭遇しなくても、迷走するだろう。
経済学の基本では、需要が先にあって、それに応える形で供給が生まれてくる。日本の政治と行政はシンクタンクを必要としていないため、シンクタンクが育たない。それに対して、アメリカはホワイトハウスも議会もシンクタンクを必要とするから、種々のシンクタンクが生まれ活発に活動して、政策提言を行い、政治に影響を与えている。
シンクタンクの研究リサーチは大学の象牙の塔とは質的に違うものである。大学の研究は基本的に政策に結びつかなくても、理論的にことの構造を解明しようとする活動であると理解されている。それに対して、シンクタンクの研究リサーチはどちらかというと、課題を解決するための政策パッケージを提言することを目的とする活動である。
日本の政治が決める政策は綿密な政策研究に基づくものではなくて、その時々の政治の必要性に応じて実施されるものが多い。たとえば、まもなく選挙が行われるから、ガソリン価格を10円ほど安くすることで、有権者に好感を与えようとする。それだけではなくて、一人当たり5万円ほどの現金給付を提唱したりしているのも同じ背景と思われる。そのいずれも選挙対策として考えられる近視眼的な「政策」といわざるを得ない。5万円ほどの現金給付を行うために、どれほどのコストがかかるか、計算したことがあるのだろうか。インフレを退治しようとするならば、もう少し根本的な政策を講じるべきである。たとえば、輸入インフレを抑制するために、行き過ぎた円安を是正する政策が必要であろう。
外交についてみても、同じことである。最近、国会議員は相次いで「北京詣で」している。日本にとって中国は戦略的に重要な隣国である。ただし、日本政府の中国戦略がまったく見えてこない。だからこそ国家議員は北京に行って「パンダを貸してください」と求めたといわれている。パンダの貸与よりもっと重要なことがあるだろう。
具体的に、課題が山積している日中関係を正常化するために、パンダを貸してもらうことよりも、隣国同士として互いに順守しなければいけないルール作りについて議論すべきではなかろうか。何よりも、トランプ関税のダメージを緩和するために、日中の助け合いについてどうすればいいか等々議論すべき課題がいくらでもある。
石破首相はベトナムとフィリピンを歴訪したが、その前に、日本のASEAN諸国との戦略互恵関係をどのように構築するかについてその戦略を明確にしないといけない。そもそも石破首相は国会で「楽しいニッポン」を提唱している。楽しいかどうかは、それぞれの人の主観的な感覚によって決まるものである。岸田前政権は賃上げを約束したが、途中で投げ出して辞任した。トランプ関税戦争によって日本経済は予想以上に後退する可能性が高い。その具体的な対策を明確に出すべきである。それを計算して創るのはまさにシンクタンクである。シンクタンクが存在しないので、絵に描いた餅をみせる。これでは、状況が悪化する一方である。
経済学の基本では、需要が先にあって、それに応える形で供給が生まれてくる。日本の政治と行政はシンクタンクを必要としていないため、シンクタンクが育たない。それに対して、アメリカはホワイトハウスも議会もシンクタンクを必要とするから、種々のシンクタンクが生まれ活発に活動して、政策提言を行い、政治に影響を与えている。
シンクタンクの研究リサーチは大学の象牙の塔とは質的に違うものである。大学の研究は基本的に政策に結びつかなくても、理論的にことの構造を解明しようとする活動であると理解されている。それに対して、シンクタンクの研究リサーチはどちらかというと、課題を解決するための政策パッケージを提言することを目的とする活動である。
日本の政治が決める政策は綿密な政策研究に基づくものではなくて、その時々の政治の必要性に応じて実施されるものが多い。たとえば、まもなく選挙が行われるから、ガソリン価格を10円ほど安くすることで、有権者に好感を与えようとする。それだけではなくて、一人当たり5万円ほどの現金給付を提唱したりしているのも同じ背景と思われる。そのいずれも選挙対策として考えられる近視眼的な「政策」といわざるを得ない。5万円ほどの現金給付を行うために、どれほどのコストがかかるか、計算したことがあるのだろうか。インフレを退治しようとするならば、もう少し根本的な政策を講じるべきである。たとえば、輸入インフレを抑制するために、行き過ぎた円安を是正する政策が必要であろう。
外交についてみても、同じことである。最近、国会議員は相次いで「北京詣で」している。日本にとって中国は戦略的に重要な隣国である。ただし、日本政府の中国戦略がまったく見えてこない。だからこそ国家議員は北京に行って「パンダを貸してください」と求めたといわれている。パンダの貸与よりもっと重要なことがあるだろう。
具体的に、課題が山積している日中関係を正常化するために、パンダを貸してもらうことよりも、隣国同士として互いに順守しなければいけないルール作りについて議論すべきではなかろうか。何よりも、トランプ関税のダメージを緩和するために、日中の助け合いについてどうすればいいか等々議論すべき課題がいくらでもある。
石破首相はベトナムとフィリピンを歴訪したが、その前に、日本のASEAN諸国との戦略互恵関係をどのように構築するかについてその戦略を明確にしないといけない。そもそも石破首相は国会で「楽しいニッポン」を提唱している。楽しいかどうかは、それぞれの人の主観的な感覚によって決まるものである。岸田前政権は賃上げを約束したが、途中で投げ出して辞任した。トランプ関税戦争によって日本経済は予想以上に後退する可能性が高い。その具体的な対策を明確に出すべきである。それを計算して創るのはまさにシンクタンクである。シンクタンクが存在しないので、絵に描いた餅をみせる。これでは、状況が悪化する一方である。