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静岡県企業12社の中国義烏輸入商品博覧会への出展とその意義(副センター長、特任教授 濱下武志)




9月12日 副センター長、特任教授 濱下武志
今年5月6-9日にかけて、静岡県の企画として、世界最大の小商品の卸売市場である中国浙江省の義烏市で開催された輸入商品博覧会に出展した県下12の企業の展示を見る機会があった。中国で行われるこのような企画への参加は静岡県としても初めてであり、これからの海外マーケットの可能性を予測するうえでも、きわめて意味のある貴重な試みであると評価できる。展示場でつぶさに観察したが、前日に地元メディアに静岡県が紹介されたこともあり、連続してバイヤーや一般の参加者が訪れ展示商品の説明に耳を傾けており、このような機会を持つことの重要性を強く実感した。

義烏(イーウー)市は浙江省の中部に位置し、省都の杭州市から南へ100kmほど内陸に入り、山に囲まれた金衢盆地(衢江・蘭江・新安江・金華江など、銭塘江の支流が形成する盆地)の東縁に位置する。古くから農業が発達し、水稲、サトウキビなどが栽培されている。金華ハムで有名な生ハムの名産地でもある。上海市の虹橋空港からは、地下鉄に連結した高速鉄道駅から1時間ほどで到着する。富士山静岡空港からは、上海便と杭州便が発着しており、想像以上に近い位置にある。

義烏市が1980年代の初めに大規模な日用雑貨の専門卸売市場を創設して以降、義烏市場は急速な成長を遂げ、今では世界中のバイヤーが良質で安価な日用雑貨を求めて集まる世界最大の卸売市場となっている。今回、静岡県は浙江省との友好提携35年を記念して、義烏で開催される「輸入商品博覧会」に本県ブースを設置し、応募した県内12社が出展した1)

出展した企業は、静岡市3社、藤枝市1社、焼津市3社、浜松市3社、湖西市1社、駿東郡清水町1社、であり、フットサル競技用品や飲料水、加工食品、小型家具、プリザーブドフラワーなどを取り扱う中小企業であった2)。5万平方メートルの会場に100以上の国・地域から1500社がブースを構え、世界各地からのバイヤーと商談が行われる。原則展示のみではあったが、期間中には一般も含め20万人近くが訪れたという。

今回の出展が実現した背景には、以下のような大切な要因があると思われる。第一に、出展企業それぞれの積極的な海外マーケット戦略がある。新たな市場開拓に向けたチャレンジ精神である。第二に、義烏マーケットが持つ世界的なネットワークの存在がある。義烏では、加工日用品の輸出のみではなく、今回のように輸入マーケットとしても機能しており、さらにそれが輸出へと繋がっている。このビジネスネットワークの広がりが根拠となって中国全土からまた世界各地からのネットワークの相乗効果をもたらしている。第三は、今回静岡県の率先した展示コーナーの開設による基礎条件の確保と出展に向けた呼びかけがある。

タテ型社会という特徴を持ち、閉じこもってモノづくりに力を集中させてきた日本社会が、今日のグローバル時代にあって横に広がるネットワークをどのように活用していくのかという課題が問われており、その意味でも今回の義烏への出展は、これからの海外マーケット戦略の試金石になると思われる。県大グローバル地域センターの「アジアの消費行動の多様性」研究チームでも、引き続いて義烏マーケットに注目し、静岡茶をはじめとするふじのくに静岡県の特産品の海外ネットワークに注目していきたい。


(関連リンク)
1)静岡県公式ホームページ(http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/b_talk/20170519.html)
2)静岡県公式ホームページ(http://www2.pref.shizuoka.jp/all/kisha17.nsf/c3db48f94231df2e4925
714700049a4e/feb0c3ae752736df4925810600304190?OpenDocument)