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2017年を振り返り、2018を展望する(特任教授 柯隆)



12月28日 特任教授 柯隆
2017年を振り返れば、さまざまな危機を心配しながらも、大きな問題が起きず、無事に終わった1年だったといえる。経済についていえば、世界的に大規模な金融緩和が実施され、想像を絶する過剰流動性が創造されている。経済のバブルが心配されているが、リーマンショックほどの経済危機は幸いにも起きなかった。

ただし、人々はさらなる経済成長を望んでいる。年末になって、アメリカのトランプ大統領が大規模な減税に関する大統領令に署名した。これが凶と出るか、吉と出るかは2018年に入れば、ある程度結論が出る。

一方、中国の債務問題や国有企業の過剰設備の問題も心配されていた。中国政府はこれらの問題について外科手術のような政策を取らず、時間をかけて問題解決を図っている。その結果、中国経済は成長が回復していないが、大きな落ち込みも見せなかった。

こうしたなかで日本経済は株価の高騰に支えられ、何となく明るい気分になった。日本経済の問題ではないが、日本企業の問題は予想以上に深刻のようだ。大手企業によるデータの改ざんや不正会計などの不祥事が相次いで暴露され、日本企業に対する信頼を揺るがす事態となった。

世界でもっとも品質管理が厳しく行われているといわれる日本企業は、なぜずさんなデータ改ざんを行ったのだろうか。また不正会計のような不祥事がなぜ起きたのだろうか。問題こそ暴露されているが、責任の所在は明らかになっていない。今、どの日本企業もコンプライアンスを声高に唱えているが、実際の経営をみると、経営に対するガバナンスは十分に確立していない。

ミクロの話は別として、マクロ的にみて、日本企業、とりわけ大企業の経営者は現場に行かなくなった。そして、経営者が行った間違った判断に対して、現場は異議を唱えることはできなくなった。2017年の流行語の一つの「忖度」は企業経営の現場でも随所にみられる。経営者の一言を忖度する中間層の幹部は部下に対して間違った指示を出してしまうことがある。一つの過ちは大きな問題を引き起こすことはないが、過ちを積み重ねているから、より大きな問題につながった。2018年は、あらためて企業経営に対するガバナンスの体制を再点検する必要があるはずである。

他方、国際政治を鳥瞰すると、2017年最大の不安定要因はアメリカのトランプ大統領の誕生である。トランプ大統領に翻弄され、国際情勢は右往左往してきた。トランプ大統領はツイッターでときには北朝鮮の金正恩委員長を「ロケットマン」と揶揄したり、ときには「賢い指導者」と褒め称えたりした。年末になって、トランプ大統領はいきなりエルサレムをイスラエルの首都と承認する発言をした。ただでさえトラブルが多発する中東地域をさらに攪乱する発言だった。

2018年、世界にとってテロの危険性は依然高いレベルにあるが、何よりも危機的な状況にあるのは北朝鮮の動静である。いつ核実験に踏み切るかはまったく見通せない状況にある。ミサイル技術がかなり進歩しているなかで、金正恩政権の暴走を食い止めることは国際社会にとって喫緊の課題となっている。

こうしたなかで少し光が射しているのは日中関係が改善する兆しが見えてきたことである。北東アジア情勢を安定させるには、日中の連携強化が不可欠である。2018年は平和な年になるよう、心より祈願する。